熱に浮かされた雛人形
どろりどろりと。
(交わり、熱に浮かされて、そしてやがてはひとつにとけ合えたら)
(ぼくは、きみのほんとうのすがたをしることはできるかな?)
君はその柔らかな瞳と、偽りがより鮮明になったピエロの微笑の奥に、本当の姿を隠してしまうから。
「探すのにも一苦労なんだよ」
「ねえ?」
(そろそろ降参してもいいころじゃあないの?)
「君のお遊びに付き合えるほど、もう僕は若くないし暇でもない」
「つれない人ですね」
(ふわりと、頬を掠めていった熱の正体を僕が知る前に、君はただ悲しそうな目をしていた)
(しかしその表情もまた、あの微笑、)
「聡明に、残虐に成りきれない哀れな子」
(だから君はただの雛人形なんだよ)
(美しく着飾り、ただ愛でられるだけの、お飾りさんのまま)
(その奥の獣には誰も近づけやしないんだ!)
作品名:熱に浮かされた雛人形 作家名:白柳 庵