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【腐向けAPH】バランスぐらぐら【英香】

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国名表記







 心のバランスを崩すときって言うのは人間、誰にでもある状況である。それは香港も例外ではなく、どうしようもない不安に駆られることがあったり、理由も無く閉じこもりたく時があるのだ。イギリスにもそんなときがあったように、香港にとってもそんなときなんてありふれている。けれどどちらかというとそんな状況は稀だった。不安に駆られたとしても平常心を保つことは出来たし、周囲に適当に当たる事だって出来た。どれは周囲からみると、酷く甘えるのが下手だという事実だったらしい。
 バランスを崩すとき、というのは自然にやってくる。前フリも何も無く、周囲がいるいないに関わらず。
 バランスと崩すとき、意味も無いのに涙があふれるときがある。気づかれたくない。
「香港、何してんだ」
「なにが」
 つと、頬を伝った涙を拭いもせずにテーブルの上においてあった冷えた紅茶を一口飲んだ。イギリスが家を出て行く前に淹れて忘れていった紅茶だ。冷めると風味も何もかも逃げて、さらに渋みにも増して酷く不味い。まずいと呟いたところでイギリスが帰ってきた。なんてタイミングの悪い奴なんだ。
 いつも通りのシングルのスーツ、手袋を外しながら、イギリスは香港の頭をさらりと撫でて、ぽいぽいとテーブルの上に手袋を置いていく。彼の手首が嫌いじゃないということを以前言ったら香港の前では手袋を外すようになった。二人で居る間の手袋の管理は香港に任されている。最近では時々こっそり洗っておくこともあるが、気が付かないことのほうが多い。むしろ気が疲れたら羞恥で死にそうだ。
「それもう美味くないだろう…って…」
「…意味は無いから」
 ただただ無表情な頬を滑り落ちる涙を拭おうとしたイギリスの手から逃げて顔を背ける。けれど自分で涙を拭わないのは無理に顔に手を当てて欲しいから、無理やり涙を拭いてもっと追求して欲しいから、心の奥にある寂しいときの「構って」の気持ちがあふれてきてしまう。惨めだなぁと思いながらまた、不味い紅茶を啜ろうとする。ウェッジウッドの茶器がかちゃと音を立てた。
「寂しかったのか」
「は…?もうそんな子どもじゃない的な、」
「そっか、そうだよな、はは」
「何でそんなに残念そうなわけ?」
「いや、なんでもない。新しい紅茶淹れてやるから顔洗って来い」
 ん、と返事をして椅子から立ち上がる。イギリスに背中を向けながら振り返ってみると、細いシルエットがキッチンの窓から差し込む光に照らされて浮かび上がった。それが妙にかっこよく見えて酷く香港は憎らしい気分になった。顔洗ってきたら思いっ切り悪口や、色々言ってへこませてやる。