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ペンダント

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「ジロー」
 後ろから突然声をかけられる。ふと目を離した隙にはぐれてしまった彼女がそこにいる。
「アリス。探しましたよ」
 苦言を呈したものの彼女に反省した様子はない。満面の笑みを浮かべて手に持っているものを差し出
す。
「見て、かわいいでしょ」
 それはペンダントだった。小さなハートがついたかわいらしいもの。
「・・・・・・お金払いましたよね」
「僕をなんだと思ってるのさ」
 ちょっぴり怒りつつも機嫌良くペンダントを眺める。
「ねえジロー。これつけて」
 そういってジローにペンダントを渡す。前から手を回してつけようとするのだがこれがうまくいかな
い。彼女の長い金髪に絡まないよう注意深く指を動かす。
「アリス、後ろを・・・・・・」
 最後まで言わないうちに彼女が顔を――正確にいうと体を――近づけてきた。
「このほうがつけやすいでしょ」
 確かにつけやすくなったかもしれない。けれど上手く指が動かない。彼女の青い瞳が近い。
 どれくらいそうやっていたのかわからない。ただ唇が重なる。
「アリス」
 はっとしてその名を呼ぶ。とたんに顔が紅くなるのがわかった。
「えへっ」
 彼女は舌をだして小さく笑った。
「ほら早く」
 落ち着いてゆっくりとペンダントをかける。
「これでいいですか」
「うん。ありがとう」
 彼女の胸元でハートが踊る。
 愛する我が君。
「ジロー、早く」
「勝手に行かないで下さい」
 愛する我が君。






 ふと昔のことを思い出す。本当に昔のこと。彼女との愛しい時間。
「ただいま」
 明るい声が響く。
「お帰りなさい、ミミコさん。今日は遅かったですね」
「今日はいろいろと書類仕事が多くて。でもね、いいもの見つけたの」
 小さな袋を開ける。
「ペンダントですか」
 2匹蝶の飾りがついたペンダントだった。アクセサリーといった類をあまり買わないミミコにしては
珍しい。
「398円だったの。安いでしょ」
 ミミコは満足そうに言ってペンダントを首にかけようとする。
「つけましょうか?」
「あ、お願い」
 彼女の後ろでペンダントの端を持って留める。
「ありがとう」
 笑顔が重なった。
(私には予知能力もあったんですかね。都合よくあの時のことを思い出していた時にミミコさんがペンダントを買ってくるなんて)
「ミミコさん。似合ってますよ」
「ありがと。安物だけど」
 照れる彼女の胸元では2頭の蝶が揺れる。

作品名:ペンダント 作家名:冬月藍