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永遠の追いかけっこ

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走って走って走って。行き着くところも考えずに逃げる。少しでも足を止めたらきっと彼は本気で殺しにかかってくると知っているから。
 星の見えない池袋の夜空が笑っているみたいだった。










 人を刺したことはなかった。自分の手を汚さずに思い通りに周りを動かすから武器を手にとる必要もない。そもそも愛してやまない人間を傷つける必要がどこにあるというのだろう。
「だけどシズちゃんには死んでもらいたいね」
 襟首を掴まれてもなお折原臨也は笑っていた。右手のナイフは彼に殺意を向ける男――平和島静雄の首筋に添えられている。否、正確には頸動脈が切れないかと試みたもののほとんど傷が付かなかったというだけだ。
「いくらなんでも無茶苦茶だね。こりゃあ『切る』じゃなくて『刺す』じゃないとダメだ」
 そのまま地面へと放り投げられても余裕な態度は崩れない。
「死んでもらいたいってのはこっちの台詞だ」
 静雄はそのまま臨也に近づく。
「……俺たちは殺せるのかねえ」
「何?」
「少なくとも俺はシズちゃん以外の人間は等しく愛しているから」
 立ち上がった臨也はナイフを仕舞う。逃走しようというのが雰囲気から透けて、静雄の怒りのゲージは一段階上がる。
「人間を殺そうっていうつもりはねえ。だがな、ノミ蟲野郎はここで殺処分しておいたほうがいいんじゃねえかと思うんだがよお」
「じゃあそれはまた今度ってことで」
 臨也は手を振って走りだした。
「いーざーやー」
 静雄が追いかけてくるのがわかる。それはいつもと変わらない――学生時代から繰り返してきた行為。追って、追いかけられて、逃げて、走って、殺そうとして、殺されそうになって。
「追いつかれたらそこで終わりだからね」
 ネオンが眩しくて、ほんの少し目を細めた。










 きっと自分も彼も誰かを殺すことなんてできないのかもしれない。
 追跡者を振り切って臨也は空を見上げ、そう思った。
(俺は卑怯だし、シズちゃんは何だかんだで優しいからね)
 それでももし自分たちが人を殺めるとしたら、それは……。
「気分が悪い話だ」
作品名:永遠の追いかけっこ 作家名:冬月藍