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先輩は自由人

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「なんで進路希望に自由人って書いちゃだめなんだろうなー」
「進路って具体的な高校や職業書くものだからじゃないですか?」
おれが答えると、綱海さんはジトッとこちらを睨み付け「生意気だなぁー」と言って、おれの髪をぐちゃぐちゃとかきまぜた。
「やめてくださいよぉー」
おれは心にもない言葉を発しながら、兄がいたらこんな感じなんだろうかと考えた。
 
綱海さんは今、悩んでいるらしい。
 
なんの変哲もないぺらぺらの紙切れに、これからの将来を左右する大切なことを書くように言われて、そういう難しい問題に頭を使って取り組むということが苦手な彼は、思ったままをのことを正直に書いて、先生に叱られて今に至る。
 
「はぁー。こんな小さい紙切れにオレの将来のことを書けるわけがないんだよ」
フェンスを掴みグラウンドを見下ろす綱海さんはとうとう諦めてしまったらしい。
その紙切れをくしゃりと丸めて無造作に床に落とした。
屋上を吹き抜ける強い風が、その紙切れを吹き飛ばしてしまう前に、おれはその紙切れを拾って丁寧にしわをのばした。
「これ書いたら、そこに行ってみんなとサッカーできますよ」
おれは綱海さんの隣に立って同じように下を見下ろした。
小さい点のようなチームメイトたちが動いているのが見えた。
「オレは先のことなんてわからない」
「テキトーに書いて嘘を吐きたくもない」
「サッカーもしたいし、サーフィンもしたい」
綱海さんはグラウンドを見つめたまま言った。
 
おれには進路のことはわからなかった。
中学に入ったばかりだし、それを卒業するなんてことはずっとずっと先のように感じたからだ。
でも、綱海さんにとってとても重要なことが決められようとしているということだけはなんとなくわかった。
だから何も言えなかった。
 
「オレは、自由人になりたい」
自由人ってなんだろう?おれは綱海さんの横顔を見つめながら考えた。
 
それは学校に通うのだろうか?
それとも就職するのだろうか?
お給料はもらえるのだろうか?
資格は必要なのだろうか?
今まで通り、サッカーはできるのだろうか?
 
「自由人になったら、今まで通り一緒にサッカーできますか?」
綱海さんはひたすらグラウンドを見つめていた。
おれもグラウンドを見つめた。
円堂さんがボールをキャッチしたのが見えた。
無性にサッカーがしたくなった。
「できる」
綱海さんはこちらを見ずに言った。
「でも、先生は自由人を認めない」
おれはきれいにのばした紙切れに目を落とした。
『第一希望:自由人』と鉛筆で書かれた上に、赤ペンで大きく『再提出』と書いてあった。
綱海さんは無言でおれの手からその紙切れを取り上げた。
「決めた」
おれは綱海さんを見た。綱海さんは真っ直ぐ前を向いていた。
「おれは先生を説得して、自由人になる!」
綱海さんはそういって、その紙切れで小さな紙飛行機を折った。
「自由人になったら、サッカーもサーフィンも、今まで通りできますか?」
おれはフェンスにくっついて横目で紙飛行機を見つめながら尋ねた。
「おう!」
綱海さんはおれを見てニカッと笑って、またおれの髪をぐちゃぐちゃにかきまぜた。
おれはその手を大人しく受け入れた。
 
「これは飛ぶぞぉー」
そう言って綱海さんはフェンスの隙間から紙飛行機を差し入れ、強い追い風とともに手を離した。
紙飛行機は風に押されてびゅんと飛び出した後、ゆらゆらと空をさまよいながらゆっくりとグラウンドに落下していった。
グラウンドでは相変わらずチームメイトたちがサッカーをしていた。
「早くサッカーしたいですね」
おれは上機嫌の綱海さんの横で、落ちていく紙飛行機を見つめながら言った。

作品名:先輩は自由人 作家名:犬川ム