二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
みとなんこ@紺
みとなんこ@紺
novelistID. 6351
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

止まり木はここにある

INDEX|1ページ/1ページ|

 
きっかけは何だったのかまでは忘れた。
…というか、どうでも良かったんだ、そんなことは。
ただ、気が付いたら何となく、気になっていただけで。
…ただ、それだけで。



その日、あいつは何だか最初から様子がおかしかったような、気がする。



昼休み。
購買から帰ってきた後、何の気なしに辺りを見回して…教室のあちらこちらで屯している集団の中に、対象人物が見あたらない事に気付いた。
ついでに、その華やかな取り巻きも。
おかげで妙に静かな教室に、違和感すら感じてしまう。
だが、誰もそんな違和感なぞ感じているようには見えない。

・・・オレだけか?

「…御伽の奴、何処行った?」
椅子を引いて獏良の前の席に腰掛けながら、戦利品を広げる。
獏良はまた大漁だね、と労いながら、問いかけには静かに首を横に振った。
「ボクが席を外してる間に何処かへ行っちゃったみたいだよ」
城之内くんは多分見てたんじゃないかと思うんだけど。
起こしてみる?
と、既に弁当(バイト先のおばちゃんから差し入れ)を高速で食した後の一寝入りモードに突入しているお日様色の頭を軽くポンポン、と。
朝の一仕事で疲れているのか、その程度の接触はものともせずに気持ちよさそうに高鼾、の親友を見遣って、本田はしみじみと溜め息を付いた。
「いや、良い。ここで起こすと後がうるせぇ…」
「気持ちよさそうだもんね」
ふふ、と獏良は柔らかく微笑む。本田の気遣いなど、お見通しだ。
内心のばつの悪さを誤魔化すように、戦利品のジャムパンと獏良のお手製卵焼きのトレードを申し込んだ所で。
「あーもー、助かったぁ」
「ホント、気を付けなさいよー。あいつ、忘れ物一つでほんとにうるっさいんだから」
にぎやかな声がして、階下に降りていた遊戯と杏子が連れ立って戻ってきた。
届けてもらったらしい忘れ物の辞書と弁当を後生大事そうに抱え込んでいる。
「お、遊戯。ジィさん、結構早く持ってきてくれたんだな」
「うん、配達のついでがあったからって早めに来てくれたみたい。もーお昼食べられないかと思ったよ~」
「良かったね。丁度ボクらもこれからだから一緒に食べよう?」
「うん!」
わたわた、と椅子と机の移動が行われていても、城之内は全く気付かない。
相変わらずだな、と今更ながらあきれもしたが本人は幸せそうな寝顔を晒したまま、夢の世界から帰ってくる気はないらしい。
へーわだな、こいつは。
まぁ、それもなにより、なんだろうけど。

こうして始まるいつものメンバーとの昼の休憩時間というのは、実は結構珍しい。
常日頃からだいたい一緒、と思われているフシがあるが、昼は意外とバラバラだ。
学食組は4限終了のチャイムと同時にダッシュで戦争に旅立ってしばらく帰ってこないし、片やお弁当組はのんびりと。杏子は仲の良い女の子たちと食べてる事の方が多いし、獏良なんかは昼の当番だから、とそのまま図書室へ行ってしまったり。
たまにこうして皆で昼を食べるときも勿論あるけれど。
「あ…っと、お前ら、御伽見なかったか?」
「え?んー…見てないわよ?」
「行き帰りは別に会わなかったよねぇ?」
問われた二人は互いに顔を見合わせて首を横に振る。
「御伽くんがどうかしたの?」
「いや、別に…」
特には何もないけどよ、と続くはずだったのだが。ふ、と箸を銜えたまま、いきなり動きを止めて傍らを見上げた遊戯に気を取られて言葉を飲み込んだ。
「え、そうなんだ?…うん」
端から見ると遊戯が何もないところへ向けて独り言を言っているようにしか見えないだろうが、自分たちはもうそれが何故なのか知ってる。
くる、とこちらを振り返った遊戯は、さっきボクたちが下に降りていく時なんだけどね、と切り出した。
「もう一人のボクが、御伽くんが階段上がっていくの見たんだって」





遊戯がメインになっていつものごとくカード談義になったり、獏良がネットで拾ってきた話を披露したり。学校での噂話、近所のおいしい店、新作の入ったゲーセン。たまにもう一人の遊戯が出てきたりもする。クラスメイトや時には他のクラスの連中も入り交じり、にぎやかに過ごす後ろで一部が必死で提出課題を写したりもしていて。
・・・そういえば御伽はその必死な様を、何が気に入ったのか面白そうに眺めていたこともあったっけ。
「・・・・・・。」

――――やっぱり、足らない。

囓りかけの2つ目のパンを急いで詰め込むと、本田は席を立った。
「本田くん、どうしたの?」
脈絡なしにいきなり立ち上がった本田を、きょとんと見上げる遊戯に向かって一つ苦笑を返すと、ひらひらと手を振ってみせる。
「いや、購買で買い忘れた奴があったみてぇだ。ちょっと行ってくるから気にすんな」



「――――本田くん」
教室を出てすぐ。
掛けられた声は決して大きくはなかったが、人の足を止めさせるのには十分な響きがあった。
「…遊戯?」
振り返った先には遊戯が。ただし、先程までの遊戯じゃない、もう一人の遊戯の方だ。
「本田くん、ちょっと」
ちょいちょい、と廊下に面した窓越しに指先で本田を呼び寄せると、窓からこれ、と袋を差し出した。
「忘れ物」
中には、本田がゲットしてきていた大事な昼飯。+お裾分け、のα。
目を丸くした本田に向けて、もう一人の遊戯はピ、と人差し指で上を指した。
窓越しに杏子や獏良たちも笑いながら手を振ってる。
「・・・サンキュ」
…ばれてやんの。カッコ悪ぃ。
照れ隠しでしかない事なぞお見通しだろうが、それでも少々ぶっきらぼうに答えて、差し出された袋を攫うと本田はダッシュで廊下を走り出した。





向かうは先程もう一人の遊戯に示された、屋上へと続く階段。
取り合えず適当に探してみるつもりだったのだが、その手間を省いてくれたらしい。
そういや遊戯が言ってたっけ。もう一人の遊戯は遊戯以外に姿は見えないかもしれないけれど、意外と皆の事を気にしてよく見てる、と。
でも、

「・・・何もこんなトコまで見てなくってもな・・・」

なんか、自分が判りやすい行動をとっているようで、恥ずかしいんだが。


・・・・・・って、そういえば。見てる、って。


――――どこまで?










「・・・・・・考えんの、やめとこ」