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溶かして煮詰めて

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「たんじょうび?」
「うん、来週の土曜」
「ふうん。お前こっち来んのか?」
「なっ!当たり前じゃん!!恋人に向かってそのセリフは無いだろ」
「あー、いや。お前なら女の子とかチームの連中とか色々もらえそうだから、誕生日とか地元で過ごすんじゃねぇのかな、と」
「だーかーら!散々言ってるじゃんか、京平が一番で特別だって!だから誕生日はこっちで過ごすの!」
「・・・・・・わかった」
(なんで今更そこで照れるの!ああもう、かわいー・・・)
「まぁそういう訳だから、プレゼント楽しみにしてるぜ、京平」


というやり取りをしてから約2週間。
六条千景の誕生日当日がやってきた。


「一日空けてやれなくって悪かったな」
「仕事じゃ仕方ねぇよ。俺聞き分けはいいんだから」
「・・・そうか?」
「それに泊まってくしー。だからそれでチャラ」
「だろうと思ったよ。っと。プレゼントだったな」
「待ってました!」
「誕生日おめでとう、千景」
門田が冷蔵庫から取り出したのは、小さめのショートケーキだった。
しかし、イチゴが沢山乗っているのはいいが、店で売られているにしてはデコレーションが歪だ。
「これって、もしかして」
「あー、その、どうせプレゼントなんて山ほど貰うんだろうと思ってな。菓子なんて作んの初めてだったからあんま美味くねぇかもしんねえけど」
「うわー。勿体無くて食べれないんですけど。ありがとな京平」
「・・・あと、これもついでにやるよ」
カタ、と机の上に置かれたのは何の飾りも付いていない鍵が1つ。
その意味を理解した千景は思わず門田に抱きつく。
「・・・ほんとにいいの?毎日来ちゃうよ?むしろ住んじゃうよ?」
「好きな時に使え。ただし、学校はちゃんと行け。親にもあんま心配かけんな」
「わかったわかった。あー俺幸せすぎる。どうしよう、京平大好きだ。愛してる。むしろ結婚しよう」
「ばか。大げさだって」
一度ぎゅっときつく抱きしめてから身体を離し、感謝の意味も込めて軽いキスをする。
最近はようやく慣れたのか、門田も所謂あまーい雰囲気になっても誤魔化したり逃げたりしないで、見つめれば笑ってくれる。
ただ、どうしても耐えられなくなると目線だけは逸らしてしまうが、千景はそんな所もかわいいと思っているのでそれはそれで楽しいようだ。
「ホントはプレゼントはわ・た・し、みたいなパターンちょっと期待してたんだけど」
「するか!それにそんなの今更・・・だろ。いつでも好き勝手してんじゃねぇかお前」
「まぁそうなんだけど。つーかそんなこと言われるとケーキよりも京平の方が食べたくなっちゃうじゃん?」
「・・・・・・・・・」
「ちょっ、引かないで!嘘、冗談だって!ここでお預けは無理だってば~」
必死になりつつある千景を見て門田は口元を緩める。
「しかし、お前のそういう台詞にもいい加減慣れたな。誕生日なんだ、好きにしろ」
「・・・・・・あんたってほんとさぁ」
「なんだ?」
「や、いい。それじゃあ、どうしよっかな。やっぱ京平の手作りケーキからかな」
そう言って、はい、とナイフとフォークを門田に手渡す。
更に笑顔と「食べさせて?」という台詞のオマケが付いてきて、門田の思考が一瞬止まる。
「前言撤回とかさせねーかんな?京平」

こうして二人のどろどろに甘い誕生日は始まりを告げた。
作品名:溶かして煮詰めて 作家名:秋加