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喧嘩中につき、

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親分と子分が喧嘩している場合、周りはそれを見ても一方的にそれが喧嘩だと断定出来ない事が多い。何故かと言えば、彼らは保護者と被保護者であるため、喧嘩なのか親が子供に振り回されているのか判別できないのだ。
そして二人の諍いの多くが――それは食べ物の取り合いに関する事が多いのだが――諍いまで達さずにぶつ切りになっている。例えばスペインの食べ物をロマーノが取ったとしても、スペインが一方的に怒っているのをロマーノは大して気にもせずに聞いている。もしくはロマーノがいくらいきり立ってもスペインはそれが大した問題だと思っていないこともある。要するに一方通行に過ぎて、彼らは真っ向から喧嘩という体裁のものをしたことがほとんどないのだった。
だから二人が本気で喧嘩する様子は非常に珍しく、意地の悪い言い方をすれば見物であり、イタリア=ヴェネチアーノやフランスやベルギーやオランダ等々、その他二人に関わっている国の多くがこっそり聞き耳を立てていた。
「この分からず屋」
ロマーノが吐き捨てた言葉にスペインの眉間に皺が寄る。彼がそんなところの筋肉を使っているのは久しぶりで、こりゃびっくりだと二つ離れた席でビールを飲んでいたプロイセンは呟いた。
「分からず屋とは何や。当たり前のこと言っただけやろ」
「俺がちょっと南イタリアを留守にすることの何が問題なんだよ」
「せやからそれがいけないって言うてるんや。仕事ほっぽって何してるん」
スペインが珍しく厳しい語調で言った。テーブルの上に運ばれてきた料理はアペタイザーのスープから一切変わっていない。もう三十分はあのままで、レストランのボーイも困っているだろうと隣のテーブルでベルギーは思う。
ほとんど手を付けられていないスープの液面が泡立ったのは、ロマーノがテーブルを叩いたからだった。行儀が悪いからではなく、自分がイラッとしていたからという理由でスペインは苛立たしげにロマーノ!と声を荒げる。
ロマーノの鳶色の瞳は細められ、ぐっと唇が噛みしめられていた。反抗心を剥き出しにしている彼は若かったが、子供ではなかった。
「うるせーよ。俺が何処に行こうが勝手だろ。…それが日本でも」
低く発された声にフランスは肩を竦めた。はっきりと聞こえてくる喧嘩中の声に視界に入った限りのすべての者が興味津々であり、いいのかねえと彼は苦笑いする。
スペインがロマーノを見据えた。睨み付けなかったのは彼の怒りがまだまだ沸騰するには程遠いからであり、自分を冷静に見せる効果もあった。
「ええからあんまり国を放って遊び回るな。ええか、日本だってそう押しかけられたら迷惑やで?」
「あいつはいいって言ってたぞこのやろー。っつか、寂しいから来てくれるのが嬉しいって」
鼻を鳴らして言うロマーノに、スペインは呆れたように肩を上下させた。
「それ、日本お得意の社交辞令やでー。そんなんに気付かんと、まだまだ子供やなあ、ロマーノはー」
「うっせーよ!てめー昔に追い出されたのまだ根に持ってんじゃねーのかちくしょー!」
噛みつくように言ったロマーノにスペインの頬がひくりと引き攣った。オランダはうぜえと思いながらも割り勘を計算しながら支払いをしようと財布を取り、オーストリアは食事半ばでナプキンで口元を拭った。オランダと同席していたベルギーはあーあ料理が勿体無いわあとため息を吐き、オーストリアの正面でハンガリーはにこやかに後でスペインには請求書を送りましょうかと述べた。
スペインは引き攣った笑顔で、へーそうなん、と淡々と言った。緑の瞳が据わっている。
「いくらロマーノでも、あんまり調子乗ってると親分怒るでー」
「ああ?怒れば?いつまでもてめーの好き勝手に出来ると思ったら大間違いだぞバッファンクーロ!」
だん!とロマーノの手がテーブルを叩き立ち上がるとスペインはにっこり笑ってゆらりと腰を上げた。
「ロマーノ、謝るんなら今の内やでー」
「そりゃこっちの台詞だぞこのやろー」
二人の間に漂った不穏な空気に後ずさったドイツの隣でイタリアは最後の一口とばかりに料理をなるたけ頬張った。
緑の双眸と鳶色の双眸が一瞬瞬き細められ――どこからともなく重厚な金属音がして、
「いい加減に日本のことは諦めろこの変態ぺド野郎がああああ!!」
「親分の言うこと聞かん悪い子はぶん殴ったるでえええええええ!!」
わかっている者はわかっているなりに、動けなかった者は瓦礫や銃弾を避けながらその場から全速力で逃げ出した。
作品名:喧嘩中につき、 作家名:碧@世の青