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三者三様の思惑回路

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寂しさはそうやって伝染していくのだ

黒沼青葉は園原杏里について邪推する。彼女の内向的な性格はもしかしたら竜ヶ峰帝人をひきつけるための演技ではないかと。常にどこか一線を引いたような態度であるのはもしかしたら竜ヶ峰帝人へ気にかけてもらいたいためではないかと。邪推は邪推の通りであり、次の瞬間には黒沼青葉は自分の思考の馬鹿馬鹿しさに嘆息する。あるわけないじゃないか、と思いながら、また次の瞬間には 限りなく空虚でナンセンスな邪推は再開される。その繰り返しである。

園原杏里は竜ヶ峰帝人について思案する。彼の優しさと少しばかりの気弱さが自分に刻々ともたらす変化について考える。額縁の中から出てみようと思わせる程度に美しい、彼について考える。園原さんと歌うように自分を呼ぶ彼と、名前を呼ばれただけで胸にじわじわと暖かさが巡る自分について考える。愛していると延々叫び続ける『彼女』へ内心 そうだね と頷くようになった自分に気付かず、困ったように眉を落としながらも笑う彼について考える。その繰り返しである。

竜ヶ峰帝人は黒沼青葉について考察する。無邪気な後輩であり、その裏にある大層不安定な内情は一体どうバランスをとっているものかと。彼の欲しがる何かを自分は差し出すことも難しいだろうし、かといって渡せないのだと言いきるには自分に何かを見出している彼の視線が気になることに思いを巡らせる。非日常を垣間見ながらも竜ヶ峰帝人は日常を捨て切れず、非日常と日常にリンクしている彼について、再び彼は黒沼青葉について考察していくのである。

「帝人先輩、園原先輩 今帰りですか?」
傍目から見たらまるで初々しいカップルのように、楽しげに けれどどこか距離を保ちながらあるいていた男女へ、黒沼青葉は声を上げる。空気をよめとばかりに睨んでくる者はおらず、竜ヶ峰帝人も園原杏里も振り返り、後輩に顔を綻ばせた。
「青葉君、君も?」
「はい!あの、良かったら俺も一緒に いいですか?」
青葉はにこにこと笑いながら、さりげなく帝人と杏里の間に割って入る。何も思っていない様子で うん と笑う帝人をちらりと見上げ、杏里も一拍置いて頷く。青葉はその一拍が気になり、二人に気どられぬよう注意を払いながら邪推を始め、杏里は帝人について思案をし続け、帝人は青葉へと考察を行っていく。思考と裏腹に進む対話は、やがて何かが崩れさる予感すら孕んだまま 和やかに 和やかに 営まれていた。

(ああ園原先輩は、帝人先輩の甘さにつけこんではいないだろうか。自分の立場を利用してはいないだろうか)
(帝人くんは、どうしてこんなに私を揺さぶるのだろう、愛したいと思わせるのだろう)
(青葉くんは一体何を考えているんだろう。僕を利用するだけに留まってくれるならまだいいんだけど)

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しこうにはばまれてみうごきがとれない
作品名:三者三様の思惑回路 作家名:宮崎千尋