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【腐】一方通行【稲妻11】

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好き
好きだ
どうしようもなく
でもそれは
叶わないとわかっている
絶対に

だってお前は、―――――

…その続きは言わない
自らを絶望の淵に立たせたくないから
それでも
俺はお前が好きだ
佐久間、俺は、
ずっとお前だけを見ていた





報告等を済ませ、佐久間と二人で部室へと入る。
その中はもう既にからっぽで、部員は皆帰った後だったようだ。
「源田ぁー」
「ん」
佐久間はどさりと椅子に座ると、声を掛けられた。
俺はすかさず近くにあったタオルを投げ渡す。
「サンキュ」
そのタオルで、佐久間は汗を拭った。
わかってるんだ。
佐久間がしたい事、して欲しい事、全部。
アイツの感情だって知ってる。

例えば、鬼道の事が好きだとか。

佐久間は俺の気持ちを何も知らずに俺の元へ駆け寄ってきて、鬼道の話ばかりする。
帝国から離れる前も、離れた後も。
離れた後の方が話す事はずっとずっと多くなった。
二言目には『鬼道、鬼道』と。
そしてそれは今日も。
「なー、源田ぁ」
「なんだ?」
「鬼道、元気かなぁ」
ほら、また。
アイツの話をするお前のその表情は一層の事清々しくて。
色素の薄い頭髪と褐色の肌と共にその美しさをぐん、と上げていた。
長い睫毛。
鋭い目つき。
オレンジ色した、瞳。
どれもこれも、俺の好みだ。
「―――――おい、源田、聞いてるか?」
見惚れていて、はっと気付く。
「…ああ、悪い」
愛想笑いを零し、佐久間の頭を撫でた。
膨れっ面のコイツも、可愛い。
「な、源田。お前最近おかしいよ」
「そうか?」
「ん。…だって、前はあんなに俺の話聞いてくれたのにさ」
ああ、それは仕方ないだろ。
だって、
「上の空だよ、お前」
そう言っているお前の事が好きなんだから。
「…そう、か?」
「うん」
「気のせいだろう?」
「いや、でも……なんでもない」
(…源田がずっと俺の事見てる、なんて、言えない、し)
ふい、と佐久間が顔を逸らす。
「?」
「ごめん、帰る」
ばたばたと準備を始め、着替える為にユニフォームを脱いだ。
途端に露になる褐色の肌。
妖艶なその肌に、喉がこくりと上下する。
ここでまた気付く。
(ああ、俺は佐久間の事をずっと見ているのか)
どうしても見てしまう。
それはやはり、自分の持っている感情の所為なのか。
どうしても離れない。
…滑稽だな。
見事な一方通行が見えてしまった。
「げん、だ?」
名を呼ばれて、また気付く。
佐久間の肩を掴み、離さない自分が居た事に。
「―――――、!」
しまった。
何時の間に歩み寄ってしまったのか、自分でもわからなかった。
無意識にこんな事をするなんて。
「…服、着たいんだけ、ど」
少しだけ頬を赤く染め、困ったように眉を顰めた。
その様子に可愛いと思ってしまう程、俺は佐久間を。
「佐久間」
掴んだ肩を引き寄せ、抱き締めた。
一瞬だけ、時間が止まった気がした。
「っ源田!?」
「佐久間、好きだ」
「はぁ?!おま、何言って、」
ぎゅう、と抱き締める力が強くなる。
「好きなんだ。佐久間。俺はお前が」
「げんだ、」
「お前が鬼道を好きなのは知っている。それでも」
「……ごめ、ん…俺…」
「…すまない。俺も帰るよ」
佐久間を引き離し、手早く準備を済ませた。
「また明日、な。佐久間」
にこ、といつものように笑いかけ、その場を後にした。
ドアを締める時に少しだけ見えた佐久間の瞳から、一筋の涙が見えた気がする。
原因を作ったのは紛れもない俺の筈、なのに。
どうしてだろう。
凄く胸の奥がちくりと痛んだ。

































誰も居ない部室に一人。
その場に立ち尽くす佐久間。
「源田、鬼道、俺、どうしたら、」
がくりと膝からその場に座り込み、ぱたぱたと涙を床に落とした。
「ごめん、ごめんなさい、」
子供のように泣きじゃくる。
それでも、声は上げなかった。