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エターナルロシアンルーレット

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それは終わりを見せないもの。




「…あ、」

自室の机の引き出しを開ければ8年ぶりに見た、小さな…けれど人を殺すのには
十分な威力を持っている銃。
それは小さな家庭教師が初めて青年に渡した、人を殺す道具だった。
そうして、初めて青年が手にし、命を奪った道具でも、ある。

懐かしい、と思うこと自体、不謹慎なのだろうか。
けれど見た瞬間に感じた感情は懐かしみだった。
しかし手にした瞬間に感じたモノは、それとは全く正反対な。

「…気持ち悪い」

嫌悪感。


弾倉にて残弾を確めればゼロであった。
無表情でソレをしまい、何気ない動作で安全装置を外す。


米噛みに銃口を充て、目を閉じた。

それから躊躇いもせずトリガーを引けば、ガチンと硬い音が部屋に響く。
青年は目を閉じたまま、何度も何度もその行為を繰り返す。


けれど銃弾は一度たりとも飛び出さない。



幾度繰り返したことだろうか。
ノックも無しに入って来た、小さな家庭教師がその行為を見て、
驚愕の表情を浮かべると青年の元へ走った。

「なにしてんだ、バカツナ!」

怒鳴りつけ、その手から銃を叩き落とす。

「死んだらどーすんだ」

「弾は入ってないよ、」

「そーゆう問題じゃねぇんだ」

真っ黒な死神は、本気で怒っていた。
幼い子どもに人の殺し方を教えた、更に幼い子どもだった彼が。

「…ただ死にたかっただけだよ」

諦めたように弱々しく笑った青年に、彼は泣きそうな顔をする。

「俺の所為か」

「どうして、」

「俺がお前を人殺しに仕立て上げたからか」

黒曜石よりも黒い、キラキラと美しい黒瞳に映される世界は、
キラキラと美しいのだろうか。
だなんて、現実逃避のような思考に笑えてしまう。

「違うよ、そうじゃない。
ソレに馴れてしまいそうになったオレがいた。」

人を殺すのを、傷つくのが、当たり前として受理しそうになる自分が、いた。

「だからせめて心だけは綺麗なまま死にたかったんだ」

曖昧に笑う青年は美しく、少年は止めろと叫びたくなった。

どうして自分を責めない。
どうしてそんなにも綺麗なまま笑える。
…どうして、彼は自分の感情の所為だと言って笑えるのだ。

せめて彼をこんな風にしてしまった自分を責めてくれれば良いのに。
そうすれば二人は幾分か楽になれると言うのに。
…いいや、自分は責められて楽になりたいだけだ。
青年の意思など、何一つ汲み取ってなどいない。



「ねぇリボーン、オレがお前に殺してってお願いしたら、殺してくれる?」



静かな口調。
黒の瞳を見つめる琥珀の瞳はまるきり感情が読み取れない。

「…なんて、嘘だよ。
そんな残酷な頼み事なんか出来る訳がないじゃないか」

笑ったのは口元だけで、瞳は一度揺れたきり哀しげに歪められたままだった。

「そんなに死にたいか?」

先ほど青年の手から叩き落とした銃を拾い上げてから訊ねる。

「ごめんな、お前を此処まで堕とすつもりはなかった。
…そんなお前を、殺してやることも出来ないんだ。俺は」

最強のヒットマンが聞いて呆れる。
名折れも大概にして欲しいと自身で思いながら、
けれどあの美しい青年を殺すことなど、出来る訳がなかった。

「もう少し、俺と地獄に付き合え」

最後に、威張った口調でそう言えば、何気ない動作で拾い上げた拳銃を青年に向けた。


「さよならだ」


響くは空の銃声。
幾度も幾度も繰り返し、響き渡る。

「リボーン…」

何処からか嗚咽が零れて、銃声と重なった。




さて泣いたのはどちらか。


end