二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

帰ってきた転校生

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「突然で悪いが、明日から相部屋になってくれ!」
「は?」

突然部屋に訪ねてきた寮長は申し訳ないといった様子で俺を拝んできた。
俺が生活しているルドルフ学院の寮は基本的に2人一部屋で割り振られている。3年に上がれば受験を理由に一人部屋を望むこともできるが、そのまま付属の大学へ進む人間は相部屋のまま卒業していく人も多い。
中等部から寮生活を送っている俺は、高等部に上がって初めて一人部屋を与えられた。その理由は、人数の関係で端数の側の人間になってしまったから。最初こそ共同生活に慣れていた俺はこの一人部屋を淋しくも思ったが、今では慣れて自由気ままに過ごしていた。

「なんか問題でもあったんですか?」

途中から部屋割りが変わる理由はたいてい人間関係のトラブルだ。部屋を変えなくちゃいけないほどの喧嘩が起きたか、問題児を監視する意味で部屋を変えるとか、俺はやっかいなことに巻き込まれるのかと思い憂鬱になった。
それに気づいた寮長は違う違う、と手を振って笑った。

「転入生が来るんだよ」
「明日からですか?」

今はまだ夏休みの最中。新学期までにあと10日以上の休みがある。

「ああ。夏休み中に入って、寮ほうに慣れておこうってことだろう。寮で友達も先に作れるしな」
「あぁ、なるほど」
「ただ、その転入生が2年生なんだわ。だから本当は同学年と組ましたかったんだけど、2年には空きが無くてな……不二には悪いんだが、了承してくれないか?」

一つ上か。確かにちょっと面倒かもしれない。しかし、こればかりは仕方がないだろう。俺はまだ1年で、一人部屋がいいんです! と声を大きくしては言えない。
俺がその提案を受け入れると、寮長はほっとした顔をした。

「助かるよ。不二はわりと上級生とも仲がいいから当てにしてたんだ」
「仲がいいって言ってもテニス部関係がほとんどですけどね……」
「いや、だから当てにしてたんだよ。その転入生、テニスでスポーツ特待生になってるから」
「え、そうなんですか!?」

観月さんあたりがスカウトしたならば、わりと早くから情報が入るのに。俺は初めて聞いた話に驚く。

「ああ、そういうわけだから宜しく頼むよ。明日、テニス部は午前中から練習だったよな? 俺のほうからテニス部に言っておくから、明日は部屋にいてくれるか?」
「あ、はい」
「悪いな、12時前にはこっちに来るらしいから」

寮長が帰っていった後、部屋に入った俺は自分が使っていないベッドや机を見る。ほぼ同じ配置で左右対称になっている部屋の片方は自分の私物と化していた。
今日中にこれをどかさなきゃいけないのか‥‥。俺は少しげんなりしながら片付け始めた。
明日入ってくる人はどんな人なんだろう。部活と寮、一日の半分を一緒に過ごすことになるのだから、気の合う人がいい。そして、できればテニスの強い人。
俺はまだわからない来訪者を想像しながら、明日を待った。



翌日、頑張って掃除した甲斐があって部屋は十分きれいになった。これなら転校生を迎え入れるに申し分ないだろう。あとは来るのを待つだけだと思っていると、寮内に響く事務局からのアナウンスが聞こえた。俺と寮長を呼ぶアナウンスは、おそらくその転入生が来たという知らせだろう。
俺が事務局まで向うと、もうすでに寮長は転入生と話しているようだった。その横顔を見て、俺は思わず叫ぶ。

「武蔵さんッ!?」

俺に視線を向けた武蔵さんは笑って手を挙げる。その表情は2年前と少しも違わなかった。

「久しぶりだな、裕太」
「な、な、なんでここに……?」
「なんだ、知り合いだったのか。なら、安心だ。さっき言っていた1年生の相部屋のパートナーは彼だ」
「え、そうなんですか? そっか……すごい偶然だな」
「ほ、本当に武蔵さんですか?」

2年前アメリカへ旅立ってしまったダブルスパートナーが目の前にいる。
立ち止まってしまった俺に武蔵さんは苦笑して手を伸ばした。握った拳が軽く肩に当てられる。

「またよろしくな、祐太」

その言葉にまた一緒にテニスができるんだとわかって、俺は大きな声で返事をした。


END
作品名:帰ってきた転校生 作家名:ACT9