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お時間様の一日

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 お時間様のご起床時間は午前5時。時間の大切さをよくご存知のお時間様ですから、睡眠は最低限の時間のみお取りになります。もちろん我々秘書は、お時間様よりも早く起きてお時間様のご起床をお待ちしております。
 お時間様の目覚めは非常によろしく、目覚まし時計も必要ございません。お時間様が起床なさいますと、我々は早速お時間様の身だしなみのお手伝いをさせて頂きます。
 三十分間シャワーを浴びたお時間様の髪を三十分かけて乾かし、丁寧にブラッシングします。とくに腕の毛は念入りにブラシをかけます。
 その後は、専属のシェフがお時間様のためにと編み出した特別メニューでのご朝食となります。お時間様は材料にも調理法にもこだわった逸品を、一時間掛けてじっくりとお召し上がりになられます。もちろん、我々と同じものをお召し上がりにはなりません。
 お食事が済みますと、お化粧のお時間になります。お時間様は人とお会いする際の身だしなみにはとても気を使われるお方なのです。
 耳の後ろまで念入りに、一時間ほど。それが済みますと、お時間様はペットを連れてお散歩をなさいます。もちろん我々も同行させて頂きます。
 ゴルフのレッスンプロ免許も持っているそのペットの世話にたっぷり一時間かけ、いよいよお時間様のお仕事が始まります。
 お時間様は、一度体調を崩されますと全世界に影響が出ますので、その体調管理も重要なお仕事です。週に数回、三時間ほど掛けて病院で念入りな健康診断を受けられます。
 この病院のお名前は、お時間様の安全のため伏せさせて頂きますが、最近秘密裏に「透明人間になる薬」を開発されたと噂の先生の元へ、通わせていただいております。
 健康診断がない日は、大抵VIPのお客様からのご予約が入っております。ですので、そちらに出向いてご依頼をお聞きし、お仕事をさせて頂くことになります。また、午前のご予約のお客様は一日にひとりだけと決まっております。
 一番最近のご依頼は…ご依頼人のお名前は伏せさせて頂きますが、ある高名な小説家の方から、一ヶ月ほど時間を戻して欲しい、とのご依頼をお受けいたしました。あとは…少し変わったものですと、ある大学教授の方から、貝とカセットをわやにする前に戻して欲しい、というものもありましたね。
 午前のお仕事はどうしても難度の高いものが多くなりますので、そのお仕事が終わりますとお時間様はお食事がてら少々の休憩をお取りになります。
 お昼のお食事は馴染みのカフェでなさいます。そのお店は頼めばコーヒーにカニも入れてくれるほど融通の利くお店で、お時間様も大層気に入っておられます。そこでのんびりと、一時間かけてお食事をお取りになられます。
 さて、こうなりますと必然的に一般の方のご依頼は午後からお受けすることになります。当事務所が午後からしかご予約をお受けしていないのはそういうわけでございます。
 一般の方のご依頼は様々ですから、短いもので10分、長いものでは一時間も掛けてお仕事をさせていただくことさえあります。
 例としていくつか、今までのご依頼をご紹介させて頂きますと…「上から紅白撮る前に」「彼がスコールに遭う前に」「8回の受験をする前に」「人類創世体験ルームに入る前に」「一日車掌をする前に」などなど、本当に多種多様でございます。それらすべてに真摯に対応していくお時間様のお姿は、我々の秘書という立場を除いてもやはり心を打たれるものがございます。
 お時間様はそこでたっぷりと六時間ほどお仕事をなさいます。終わりましたら、我々秘書とともに少々の事務仕事を行います。
 我々としても休んでいただきたいのはやまやまなのですが、どうしてもお時間様に目を通して頂かなくてはならない書類というのは発生してしまうものなのです。
 そうして一時間ほど作業を行いますと、今度こそお時間様のその日の業務はおしまいになります。自宅に帰りますとペットをかまってやり、ペットとともに一時間ほどのバスタイムをお取りになります。
 それが済みますと、専任のシェフが作った軽い夕食を食べます。
 この席に時折、黒い翼を持ったお客様が混じることがあります。聞くところによると、お客様はお時間様とよく似たことが出来るそうで、そのことでいろいろなご相談などをお互いなさるようです。
 一時間かけてお食事を終えると、最後に我々秘書と、明日の予定について打ち合わせを行います。それが終わると晴れて、お時間様は眠ることが出来るのです。
 そしてお時間様のお休みを確認したところで我々も部屋へ下がって睡眠をとらせて頂きます。そうしてお時間様の一日は終わりを迎えます。
作品名:お時間様の一日 作家名:泡沫 煙