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作業妨害致し候

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勘違い伊日←仏




「ねえ日本、俺がオタクになったら日本は俺のことが好きになってくれる!?」
「ぶっふう!」
日本は口に頬張った煎餅の鋭利な攻撃を受けて咽た。正しくは、煎餅の粉が喉にもつれ込んで正常な呼吸を阻害された。
ごほっごほっと病人のような咳をする日本に、イタリアはヴェーと鳴く。慌てて背中をさすってお茶を差し出す彼は介護の人みたいだと日本に思わせた。まあそれはどうでもいい。
「どうしたんですか、いきなり…」
「あのね、フランス兄ちゃんが、日本はオタクだから恋人はオタクじゃないと駄目だろ!って」
「……自重乙…」
思わずオタク用語で返した日本はため息を吐いた。
きっとフランスは大した考えもなくイタリアをおちょくっているのだろうが、恋愛の国は何もフランスだけではない。目の前でヴェーヴェー喚く青年もまた、恋愛には拘りと執念を持っている国家だ。そうやって周りから日本との関係に手を出されるとすぐこれである。あまり気にしないタイプだと思っていたのだが意外と繊細だったらしい。
不安げにこちらを見つめるイタリアに、日本は苦笑いと共に手を伸ばして頭を撫でた。よく日に当たった麦のような手触りの髪がしっくり手に馴染む。
「ご安心を。私は別に、好いている方に趣味を強制したりしませんから」
「ほんと?やったー」
わーい、と諸手を挙げて喜ぶイタリアに、日本は一息吐きつつ番茶を啜る。
とりあえずオタク仲間の彼には後で作業妨害スカイプを仕掛けてやらないと。



[日本:次にやったらお宅の嫁を拉致りますよこのすっとこどっこい]
原稿が進まないくらいの妨害をされてフランスは肩を上げ下げする。今宵はPCを付けっぱなしで片手にワインがいいだろう。
恋人を不安にさせたと、彼が突っかかってくる。
酒が入ってほんのり浮ついた気持ちを味わいながら鼻唄を歌った。
――早く気付けばいいのにねぇ。
別に遊びじゃなくて、本気で妨害しているのだということをさ。
作品名:作業妨害致し候 作家名:碧@世の青