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【ガンダム00】心を言うのに、臆病になりました。

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単独で地上に降りるのは、トレミーの中ではあまりない。マイスターと違って任務として降りるわけじゃないから、今回のようにきちんと目的があって降りるのは、本当に珍しいことだ。
 と言っても、もう任務は終わってたり。もちろんトレミーに戻るまでディスクは死守しなくちゃいけないし、守秘義務も必死。あえて旧式のディスクに入れているから、かえって目立ってしまう。
 ただ今それより問題なのは、町で可愛い指輪を見つけたことだ。たまたま皆からの頼み物を買出していたときに、見つけてしまった。細い金色のペアリングで、少し値は張ったけど、買えない額じゃない。
「……しまったなぁ」
 こんな事なら、もっと持ってきたのに。トレミーに運ぶ日用品や頼み物を買った後で、今日引き出した現金は使い切ってしまった。それに天柱のトレインの時間もある。まだまだ余裕があるとはいえ、万が一に乗り遅れたら洒落にならない。
「予約、とか……出来るのかな、ここ?」
 ショーウィンドウから見える店内の様子からでは判断できない。だが、恐らく出来るだろう。
 ああ、でも。
 贈る相手がいないんだよなと、呟く。すこし苦笑いになった。
 贈りたい相手は、いるには、いる。だが告白する前に振られてしまった。その際、タイプじゃないとはっきり言われた。
 もちろん、タイプじゃないってだけで嫌われているわけじゃない。彼女は、プレゼントとかは、喜んで受け取ってくれる。女の子だし、そういったお洒落には敏感なだから。
 だけど、見込みはないんだ。ペアリングで、それでも受け取ってくれるならって人もいるらしいけど。俺は無理。片思いもいいところだ、そんなの。
「……そろそろ、やばいよなぁ」
 時計を見て、もう一度指輪を眺める。やっぱ綺麗だと思う。衝動買いはしない方だけど、これは絶対に当たりだ。
 買おうかな、やっぱり。クリスに、きっと似合うはずなんだ。


 こんなに早く再び降りることが出来たのは、偶然に近い。
 つい最近ガンダム・スローネとかなんとかがプトレマイオスに来てから大忙しだ。しかも、彼らのやり方はマイスターを苛立たせている。まあ、あの中で最年長のロックオンでも24歳だし、仕方ないって言えばそうだ。
 前回と同じ店の前に立つ。結局、買っちゃうんだよ。でもクリスに似合うなら、それだけで構わない。それに別に俺じゃなくてもいい、フェルトとお揃いってことにすればいいし。スメラギさんが拗ねないよう、彼女にもブローチか何か買っていこう。
 店に入る。前回はショーウィンドウ越しに見たけど、中に入るとやはり良い店だと思う。専門家でもないから何処がとは言えないけれど、インテリアにすでに品がある、気がする。
「いらっしゃいませ」
「あ、指輪が欲しいんですけど。あそこの……」
 台を指差したとき、あの小さな箱がガラスの中から出される。そのまま俺の前を素通りして、先にいた黒髪の少年の手に渡った。まだ学生だろう幼い顔は、恐縮したように頭を下げ、それでも満足そうに微笑んでいた。
「お客様?」
「ああ、えーと……」
 ガラスに向き直る。可愛い指輪は、他にもあった。さっきのより断然高価なものも。
 だけど、違うんだよ。欲しかったのは、あの指輪だからさ。
 そこまで思って、ふうと息を吐く。何だかしおらしくなっている。キャラじゃないよ、これは。
 お客様と、再び呼びかけられる。
「来月までになら、先程のものと同じ物を作れますが」
 呆然となった。しばらくして、ああ、ばれてたんだなと思う。
 いかがかと言い募る店員に、微笑みながら結構だと返した。
 好意は嬉しい。でも、やっぱり違うんだよ。意地を張っているとかじゃなく、俺が欲しかったのは、この前一目惚れしたあの指輪だから。
 あの指輪は見知らぬ少年に先を越されちゃったけど、それは俺に縁がなかっただけなんだ。悔しいとか、そういう感情じゃない。同じ物でも、浮気はダメだよ。


「たーだいまー。はい、お土産ですよー」
 そういって近くにいたロックオンに木箱を持ってもらう。いくら無重力だと言っても、ワインを一ダースも運んでくるのは疲れた。
「お帰り。ラッセはどうした」
「ラッセさんは先にモレロさんの薬届けに行きましたよ。はい、これロックオンの」
 おうと感謝を述べるロックオンに笑いかけ、クリスとフェルトに近づく。お土産だと、お揃いの髪留めを渡した。二人は一瞬驚いて、すぐに嬉しそうな顔になる。クリスはすぐに髪をそれで結い直している。
「リヒティ、ありがとっ!」
 銀の飾りをつけて笑う彼女を見て、ああ可愛いなと。
 好きだと想っているんだと、思う。