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【ガンダム00】太陽の髪の人。

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その少女の想像していたよりも整った顔立ちに、少しだけ面倒だと思う。均整が取れているということはその分若く見える場合が多い。目の前の少女に表情がないため、私とどれだけ離れているのか、さらに年齢の判断が付け難い。
「ソーマ・ピーリスです。よろしくお願いします」
「グラハム・エーカーだ」
 手を差し出す。それを一瞥し、一瞬の間を置いて彼女も左手を出してきた。小さな手だが、適度に引き締まった強さを感じる。
 ユニオン、AEU、人革連の合同演習が再び決まった。ただ、今度はガンダムの鹵獲を目的としない、本当の意味での演習だ。各チームの精力部隊との演習とあって、ユニオンもオーバーフラッグの全員を出動している。
「女子棟はないが、東館はそちらの自由だ」
「先程、隊長から聞きました」
「それは失礼した」
「いえ。感謝します」
 彼女の言葉にたいした抑揚はなく、表情もほとんど動かない。
 眉を顰める。彼女は機械ではないのだ、それなのにこの淡々とした様はなんだ。これが人革連で秘密裏に行われていたものの結果なのであれば、私はプロフェッサーと同じく、ソレスタルビーイングに感謝しただろう。
 私の表情を見て、ソーマが口を開く。その疑問をやんわりと押しのけ、チームに戻るよう勧めた。たいして話もしていない、それに、話がしたいからと彼女を連れ出したのだが、このままでは彼女にも不快な思いをさせるだろう。
 我ながら随分と理不尽なことだ。だが、ソーマはただ頷いて敬礼した。
 その様子にこちらの不愉快が最高潮に達したのだろう。彼女が扉のボタンに触れようとしたとき、呟く。
「君も、手術を?」
「はっ……?」
 ソーマが振り向く。目を合わせられずに横を向いたうえ、俯いた。
「気に障ったなら、謝ろう。ただ、超兵はもはや君だけだと聞く」
 ソレスタルビーイングが人革連の研究コロニーを襲撃したときに流れた情報。誤報や撹乱目的ではない事実として告げられたそれに、酷く嫌悪感を催したのは確かだ。生命を侮辱しているとしか思えない。
 ソーマはそれが非道だと思うのかを逆に問うてきた。真っ直ぐ背中身向けられた質問に、彼女も軍人であると、いやでも認めなくてはならなくなる。
「人としてなら、そうだと言わせてもらう」
「そうですか。では、それが正しいのでしょう」
 思わず視線を送る。正しいと肯定されるとは思わなかった。
 だが彼女は肯定したうえで、それが何だというように見つめてくる。おそろしく強い存在なのだと、理解させられた気分になった。そして逸れることのない瞳に、離れていようとも見間違えない色を見つけた。
「金の瞳か」
 作り物めいたそれを見て、人外の色だと思う。冷たい。鉱物の色だ。
 彼女が己と同じように目を逸らしてくれればよかったのにと、理不尽すぎるエゴを感じだ。
「何か」
「いや、――似合っている」
 少し見目を気にしてはと、笑いを滲ませて言う。それがやましさを隠ための言い訳だと分かっているだけに、自嘲しそうになるのを必死で抑えた。たと己のことでも、女性の前で嘲るなどとても紳士的なことではない。
 ソーマはわずかなタイムラグをおいて感謝を告げる。これを素直と取るか愚直と取るか。おそらく私は後者を取ったはずだ。
「グラハム・エーカー殿。私も一つ、よろしいですか」
 再び退出を告げたソーマが言う。悟られたかと思う。それも仕方ない。少々あからさまだったのだから、侮蔑されても責められないだろう。もしこちらの軽蔑を悟った上で感謝を述べたのなら、彼女はまさしく愚か者だ。
 そのまま彼女を背にして待っていると、くすりと笑う気配がする。驚いて向き返れば、ソーマは意外にも優しげな表情のままでこちらを見ていた。
「貴方こそ、自分の見目を考えていただきたい。金の色が似合うのは、何も目だけではないでしょう」
 太陽の髪の人。柔らかい声がそう呟いて消えた後、つい椅子に座って額を覆う。
 途端に、どうしようもないと思う。愚か者は私ではないか。彼女の目が鉱物などと、節穴もいいところだ。
「反則だ……、私は聞いていないぞ」
 咽が渇く。鼓動が速い。呻き声が漏れる。
 謝らなくては。それよりも夕食に連れ出そうか、いきなり謝るのはムードも何もない。いや、詫びるためにもやはり謝罪を。ああもう会えればいい。
 椅子を蹴倒したまま追いかける。出て行った先で、彼女はどちらに曲がっただろう。




  [  1  追いかけて追いついて、まず、何を言おう。 ]