不意打ち
ミライは珍しく大きな声をあげた。
「ああ。来月からだ」
「期間は?」
「未定だが、少なくとも半年」
突然の報告にミライはしばし声を失った。
サイトーさんのいない九課。考えたこともなかった。
しかし、職務上よくある事なのだ。
今までずっと一緒に居られた方が珍しいと言ってもよい。
「こっちでの任務はどうするんですか?」
「お前がいるだろう」
くだらない事を言っていると思った。
でも、他に言葉が見つからなかった。
長い沈黙が時間を支配する。
「出来ないというなら、その旨、少佐には申し出ておくが?」
サイトーは煙草に火をつけた。
相変わらず、この手の言葉は容赦なく浴びせてくる彼。
「結構です」
即答すると、彼はと予想通りといった風に眉をあげた。
「土産買ってきてやる。リクエストあるか?」
何故、彼はこんなに平気なのだろう。
改めて自分の思いばかりが強いことを思い知らされる。
ミライは下唇を噛んだ。
泣くような真似だけはしたくない。
彼はそういう自分を好きではないし、何より自身のプライドが許さない。
「……ダイヤ」
ミライはぼそりと呟いた。
「あ?」
間の抜けた声をあげるサイトーに、ミライは大真面目な顔で言った。
「サイトーさんが戻ってくる頃には私。それだけの価値になっています」
サイトーは一瞬目を丸くしたが、すぐにくだけた表情になり大声で笑った。
その子供みたいな笑顔を見て、胸の中の何かが弾けた。
ミライは勢いよくサイトーに抱きついた。
勢いでクイーンサイズのベッドに倒れ込む。
「私頑張ります。だから……サイトーさんも……」
声が震える。
「気をつけて行ってきて下さい」
しかし、堪えた。
偉い。自分。
「ミライ」
「はい」
「俺が戻ったら、一緒に暮らそう」
ほんと。この人ってスナイパーだ。
我慢していた涙がぽろぽろと零れた。