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美味しいプリンの食べ方

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どうしてこうなった。
そう思いながら僕は横にいる幽さんに不自然にならないように笑った。









始まりは僕が静雄さんと談笑していたときだった。
僕らの関係と言えば、知り合いと言うにはそんなに薄くなく、友達というにはそんなに濃くもないもので、なんだかよく分からない曖昧なものだった。
会えば挨拶をするし、話もする。それだけ。
だから今日も休みだという静雄さんに偶然出会って缶コーヒーを奢ってもらった。
その後公園であったことなど、臨也さんに関係ないことをゆっくり話したりして、僕は静雄さんとゆったり話すこの時間を気に入っていた。
そんなとき、突然静雄さんの携帯が鳴り響く。どうやらトムさんらしい。
わりぃ、って静雄さんは立ち上がってベンチから離れて話し始める。
僕はコーヒーが温くなる前に飲み干そう、とぐっと一気飲みしたときだった。
くいっと袖口を引かれる。
ん? とそちらを見れば、そこには

「は、羽島……幽平さ、ん?」

疎い僕にでも分かるイケメンと有名な羽島幽平さんが!
彼はしぃ、と人差し指を口元に当てて僕を見ている。
いやいやなにこれ、どういうこと? 撮影中?

「竜ヶ峰帝人くん、だよね」
「え! は、はい」

え、な、なんで僕の名前知ってるの!? 慌ててる僕を後目に羽島さんは僕の手を掴んで、一緒にきて。と言ってきた。
え、だから、え? どういうこと!?









連れてこられた場所は、マンションの一室、名札はかかってなかったから何の部屋なのか分からない。
もしかしたら羽島さんの私室かもしれない。
……いや、だからさ、何で僕はここにいるの?

「もう大丈夫かな」
「あの、羽島さん」
「幽」
「へ?」
「平和島幽。本名」

本名。……え? 平和島?

「……あの、もしかしてお兄さんは」
「平和島静雄。ここもそう」

ええー!!!
まさかそんな繋がりなんて思わなかった……え? ここ静雄さんの部屋!?
思わず部屋をきょろきょろ見渡してしまってたら

「帝人くん」
「はい」
「プリンはイチゴでいいよね」
「は、はい」

平然とした顔で羽島さ……いや、幽さんが冷蔵庫をあけてプリンを僕に渡してきた。
それを受け取れば、そこに座って、と言われるからソファに座る。
そしたらスプーンを渡して幽さんは僕の横に座った。
う、なんで横に座るんだろう。緊張する。
横の幽さんがプリンの蓋をぺりぺりめくる音を聞いて僕も蓋をめくる。
スプーンで掬って口に入れたら甘くてプチプチしてて美味しかった。

「……おいしい」
「帝人くん」
「はいっ」

幽さんに呼ばれ、横を見れば幽さんがふんわり、いやもう本当ふんわりっていう笑い方であーんって自分のプリンをスプーンで掬って僕の口に入れた。
へ?
へ?
いやいやいやいやいや!!
口の中に桃の甘い味が広がる。こっちも美味しい……じゃなくて。
い、いま、幽さんというか羽島幽平にあーん、してもらっちゃったんだけど! ファンの人に羨ましがられるよ、コレ。
なんて思っている場合でなく。

「美味しい?」
「あ、美味しい……です」

あぁ、もう本当にこの状況がよく分からない!

「あ、あの!」
「ん?」
「何で僕を知ってるんですか?」
「あぁ、聞いたから」

誰に。
なんて思った瞬間、なんだか足音が近付いていることに気付く。かなりバタバタしてる。

「かすかぁぁあああ!!!」
「あ、鍵開けといたのに」

バキィッガコンッて思い切り凄い音がしたかと思うと、息を乱している静雄さんが中に入ってきた。
久しぶり、と幽さんはなんでもないような顔で手を振ってる。
……僕はどうしたらいいんだろう。

「お前、何か吹き込んだか」
「別に。プリン食べてただけ。ね、帝人くん」
「は……んっ」

い、と言う前にまたプリンを掬ったスプーンを口に入れられる。
また桃の味。

「帝人くん、犬みたいでかわいいね、兄貴」

そう言って頭を撫でられてしまう。
う、恥ずかしい。
静雄さんを見れば、怒ったような、呆れたような、そんなよく分からない顔をしてる。
うう、どうしたらいいんだろう。

「兄貴にもプリン買ってきてるよ」
「……おぉ」

そう言って静雄さんは冷蔵庫にいってオレンジのプリンを取ってきて……あの、だからなんで僕の横に座るんですか。
左に幽さん、右に静雄さん。
おかしい、おかしい!

「竜ヶ峰」
「はいっ!」
「ほら」
「……え」

静雄さんがすごく普通にプリンを掬ったスプーンを僕の口の前に出してきた。あの、これはもしや……幽さんと同じってことですか?
戸惑っているのに静雄さんは手を下げてくれない。
むしろ、食べろ。と口元にもっと寄せてくる。
あぁ、あぁ、もう。なるようになれ!
パクリとスプーンを口に入れて食べれば、おいしいか? って静雄さんが笑いかけてくれた。
それがもう綺麗すぎてドキドキする。そうだこの人も美形なんだよ、なんて思ったり。
は、はい。となんとか答えたら、そうか。って頭を撫でてきた。
……僕はいつの間にか平和島兄弟のペットになった気持ちになった。
二人の扱いはペットのそれだよ……
自分のプリンを食べながら、そのプリンの甘さに僕は軽く溜息を吐きそうになった。
ちなみに二人は自分で食べるよりも僕に食べさせる方が多かったのは言うまでもない。
作品名:美味しいプリンの食べ方 作家名:秋海