記念日
「ああ、おかえり」
「今日の晩飯はなんだ?」
「おまえはいつも帰ってくるなりそれを聞くんだな。鰤の照り焼きと、玉ねぎを丸ごと煮たものだ」
「へえ」
「玉ねぎは、今の季節だから、新玉ねぎだ。甘みがあって、うまい。それに、空豆も旬だから買ってきた」
話をしているうちに桂の顔がほころぶ。
頭に、陽光を受けて野菜が育っている様子が浮かんでいた。
「今は、いい季節だな」
「ああ、そーだな」
銀時も表情をやわらげて、同意した。
だが、その表情が少し硬くなる。
「……ところでさァ」
「なんだ」
「今日の晩飯はそれとして、明日は外に食べにいかねーか」
桂は小首をかしげる。
「別にかまわんが、なにか、あったか」
「……明日で、ちょうど一年になるだろ」
なにが。
そう即座に問おうとして、しかし、とりあえず考えてみようと思い直した。
そして、思い当たる。
一緒に暮らすようになってから、一年だ。
なるほど、と納得する。
しかし、自分は忘れてしまっていたのに、銀時はよく覚えていたなとも思う。
その上、祝おうとするとは。
「それからさァ、オメーのアレも近ェだろ」
アレとはなんだ。
そう即座に問おうとして、しかし、やはり、やめておく。
これについては、すぐにわかった。
誕生日だ。
「ついでに祝ってやるよ」
銀時は素っ気なく言い、眼をそらした。
とてつもなく照れくさいらしい。
笑ってもいいだろうか、と桂が思っていると、銀時がまた口を開いた。
「だが、言っとくが、たいしたことはできねーからな」
「わかってる」
そう返事した直後、たまらず噴きだした。
なにを言っているのだろうかと思う。
その気持ちだけで充分すぎるほど嬉しいのに。