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愛を伝える。Inglez

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バタンッと勢いよく後ろ手にドアを閉めた。
思ったより強くなった衝撃に、今にも溢れんばかりに目に溜まっていた涙がボロボロと落ちる。
唇を噛みしめ、声を抑える。

泣くな、泣くな、泣くな、泣くな、と声に出さず唇だけ動かしたが、涙は止まる気配は無かった。



好きだった。
そんな言葉一つじゃ表せないくらい、好きだった。
会議で顔を会わせるだけで自分の胸は面白いほど高鳴るし、日本が側に居るというだけで眩暈がした。
初めて会話をしたときなんて、突然えら呼吸になってしまったのかと思うほど息ができず、俺はパクパクと口を動かすことしかできなかった。

挙動不審な怪しい奴。

そんなこと自分が一番わかってる。
日本の前で格好悪いところばかり見せてしまう俺を、アメリカやあの髭野郎は馬鹿にしたが、当人の日本だけが優しく笑っていた。


好きだった。
馬鹿みたいに好きだった、だから気がついた。
日本が髭野郎を見る目が他と違うことに。
最初はむしろ、冷めた目でみていたと思う。

俺にも、アメリカにも、ドイツにも、イタリアにも、ギリシャにも、中国にも、ロシアにさえも暖かな雰囲気で接していたのに。

フランスにだけ、『必死に暖かに接するふり』をして、ふとした瞬間日本らしくない冷たい目で見ている。
日本自身、無意識だったんだろう。
たぶん、こんなことに気がついたのも俺だけだ。

いつからか、そんな冷めた視線が時折、苦しげに、苦々しげに、悔しげに、そして悲しそうに歪むようになった。
いろんな負の感情を全部ひっくるめて、それでもそれを隠して日本はフランスと接していた。
馬鹿な俺は喜んでいた。
あの髭野郎はライバル離脱しやがった、と。

でも、その後すぐに俺は単純な自分の頭を呪った。

女と二人で歩くフランスを見た日本の表情は一目瞭然だった。

でもその表情も一瞬で、日本はすぐに微笑んで『フランスさんはおモテになりますね。』と俺に笑いかけた。
俺みたいに逐一逃さず日本を見てるような奴じゃなきゃ、見逃してしまうほどの表情の変化だ。


ずっと聞けなかった。
『日本はフランスが好きなのか。』と。
言えば、日本は否定しただろう。そして逃げるのが得意な俺はその言葉に安心しただろう。
でも、そんなはずは無い、と心の中で疑心暗鬼になってしまう。

それが怖くて、俺は日本に何も言えなかった。

あんなに側に居たのに。


好きだった。
好きだったんだ。


フランスが、自分の身の回りの女関係を清算していると噂が流れ、毎日のように奴の頬に手形が残るようになった。
俺は、その噂を聞いた時、とうとうか、と諦めに似た感情を抱き、その一方で、やっとか、と安心した気持ちになった。

ある時、イタリアに呼び出された。
『日本はねー、フランス兄ちゃんが好きなんだよ。』
そんなことはとっくに知ってる、と笑ったが、続く言葉に俺は目を見張った。
『でもね、日本は自分は大勢の中の一人、って泣くんだ。』

足元から何かが崩れた。
俺は日本に何も言わなかったこと、聞かなかったことを激しく後悔した。
まさか、既に日本とフランスがそういう関係だったなんて思っちゃいなかった。

清廉された日本の優美さはどこか穢れを知らない、幼い子供のようにも見えたから。

そして、次に感じたのは恐ろしいほどの怒りだった。
日本に触れることを各国が望む中でただ一人それを許され、それでいながら今までふらふらと遊びまわっていたフランスに。

お前なんかに、日本を幸せに出来るはずがない。


数日後、俺はあるカフェにフランスを呼びだした。

「なぁに?俺ってば今日は大切な用事があったんだけどなー。」
「・・・。」
「お前があんな真剣な声で呼びだすからさ、そっちキャンセルしたんだからね?くだらない用だったら許さないぜ。」
ケケッと笑うフランスを俺は睨みつける。
いつもと違う俺の様子にさすがのフランスも不思議そうな顔をした。

「どうしたのさ、そんな親の敵を見るような目で。俺ってばなんかしちゃったわけ?」

言いたいことはたくさんあった。
でも言い始めればキリが無い。
それでも震える唇で、どうにか声を絞り出した。

「てめーは、日本が好きか?」
「日本?突然だね、もちろん好きだよー、可愛いしv」
それは俺が望む答えじゃない。
俺は唇を噛んだ。
「そうか、その程度か。」
「ん?」
「じゃぁ、俺が貰っても良いよな?」
そう言って、フランスに挑戦的に微笑んだ。
フランスの野郎は少しの間ポカンとして、「ああ。」と声を上げた。
「何?イギリスもマジで日本が好きなの?」
「ああ、そう言ってる。」
いらっとしながら答える。
「こないださー、イタリアちゃんからも言われたんだよね。『フランス兄ちゃんから奪って見せるっ』ってね。」
その時を思い出したのか、フランスはくすくすと笑う。

「てめぇ、ふざけ「駄目だよ。」
俺の文句にかぶせるようにフランスが言う。

「イタリアちゃんにも言ったんだけどさ、日本は俺の物だから。」
クスクスと笑顔のままフランスは続けた。
「俺だってね、乱暴は好きじゃないんだよ?イタリアちゃんは勿論、お前のことも嫌いじゃないし。」
「でもね、日本を奪う奴だけは許せないんだ。きっと、それが誰であろうと、俺は殺してしまう。」
楽しそうにそう言い放ったフランスに俺は悪寒がした。

「…っ、そんなに好きなら、なんで…っなんで今まで日本を苦しめた?」

「悔しいじゃない。」
アッサリとフランスはそう言う。
「は?」
「俺ばっかり頭がおかしくなるくらい日本を愛しちゃってさ。日本は涼しい顔して。」
「・・・。」
「俺が女と居たって気にしないし、好きって言葉も受け流して、可愛い顔してむかつくでしょ?」

俺は『恋は盲目』という言葉のの悪い例を見た気がした。

「フランス、お前は何もわかっちゃ無いんだな。」
「はい?」
「日本がどれだけ、どれだけお前を思って苦しんだか…俺の方がずっと知ってる。」
「何それ、そんなわけないでしょーよ。俺のが日本と一緒に居るんだし。」
ハハッと馬鹿にしたように俺を笑うフランスに、俺はなんだかフランスが哀れに見えた。

女たちに愛されることばかりに慣れ過ぎて、愛し方がいつのまにか下手になったんだな、こいつは。

「これ以上日本を悲しませるつもりなら、俺はもう退かない。」
本当は退いても良いと思ってた。
日本が愛しているのは間違いなく目の前に居るこの男だから。
「例えお前に殺されても構わない。俺は、日本が好きなんだ。」
「っ、そんなマジになんなって、…おい、イギリス!?」
「じゃぁな、此処の代金は特別に俺が払ってやるよ。日本を貰う変わりだ。」

そう言って、カフェを後にした。


その、次の日だった。
フランスから連絡があった。
日本と付き合うことになった、と。
俺はそれに遅ぇんだよ、馬鹿、と返し、…良かったな、と呟いた。

「ありが」フランスがそう言いかけたので、俺は電話を切った。




涙は止まらない。
涙腺はぶっ壊れた。
好きだった。
最後まで何も言えなかったけど、日本は俺の気持ちなんて知りはしないだろうけど、それでも好きだった。