あなたはヒーロー
一方通行は彼を見ると、様々な感情で胸の内が踊り狂う。
それは羨望であったり、嫉妬であったり、憎悪であったり、畏怖であったり、恐怖であったりする。
はじめはよく解らなかった。
なぜ、彼にあらゆる感情が向くのか。
たしかに彼はヒーローだ。
ヒーローであった。
本人が否定しようが、彼はヒーローなのだ。
彼にだって悩みがあるかもしれない。
理不尽な出来事があったかもしれない。
それでも一方通行にとって、彼は眩しいほどヒーローだった。
結局彼は、彼が知らないところで大勢を巻き込んで幸せな結末へと導くのだ。
関わったすべての人を。
だから彼はヒーローなのだ。
一方通行のヒーロー。
だが、それでいて一方通行は彼が嫌いだった。
嫌いだったが、彼は一方通行にとっては素敵で最高で諦めの悪いヒーローだった。
嫌いで嫌いで嫌いでどうしようもないくらい、彼の存在に一方通行は救われた。
だから、一方通行は彼が嫌いなのだ。
一方通行を救おうなど考えるのは彼女と彼ぐらいだろう。
彼はヒーローだから。
目の前で助けを求めるものがいたら、きっと、いや、絶対手をのばす。
ああ、だから一方通行は彼が嫌いだ。
どんなに苦しんだことだろう。
でも、その苦しみさえ、彼が壊す。
ああ、だから嫌いだ。
嫌いで嫌いで嫌いでどうしようないくらい、彼は一方通行に救いをもたらす。
どんな神よりも一方通行にとって彼は絶対だった。
彼がいれば彼女と一緒に一方通行さえも救われる。
だから、一方通行は彼が嫌いだ。
涙が出てくるほどに。