ボンゴレさんちの猫ファミリー。
古い樹の根元、うろの中で震えていた。
彼は細心の注意を払ってそうっと抱き上げ、懐に抱えて連れ帰った。
「捨てて来い」
「嫌だ」
メイド辺りから聞いたのだろう。
ジョットの”拾い物”の話はすぐにGの耳にも入った。
「此処は公園じゃねーんだぞ」
見下ろすのは彼の膝の上の小さな毛玉。
「良いじゃないか、猫の一匹くらい」
二十歳はとうに越えている筈なのだが、童顔と相俟って口を尖らす様は幼く見える。
Gは思わず溜息を落とした。
子猫はというと、毛布とタオルに包まっても尚ぷるぷると震えている。
「見たところ、まだ目も開かねーくらいか。母猫はどうした」
「居なかった」
その言葉にGも眉根を寄せる。
それが意味するのは、野犬にでもやられたかそれとも育児放棄されたか。
ジョットにも子猫にも血の臭いはしない。ならば後者か。
「一人ぼっちだったんだ」
ぽつりとジョットは呟いた。
「周りには生き物の気配なんて他に無かった。こんな小さな命が」
たった、一匹で。
淋しいと言っている気がした。
温もりが欲しいと泣いている気がした。
ジョットには捨て置く事が出来なかった。
「…ミルクはもう与えたのか?」
「いや、これからだ」
屋敷に戻って直ぐに会ったメイドが、猫の扱いに慣れていた。
今はそのメイドに頼んで子猫用のミルクを作って貰っている。
「最後まで責任以って、てめえが飼えよ」
「! ああ!!」
絶対にオレが育ててみせると言い切った彼は、嬉しそうに毛布ごと子猫を高く掲げた。
「良かったな、ツナ!」
「…何でマグロだよ」
「知らない。浮かんだのがこの名前だった」
もうちょっとマシな名前があるだろうに。
そして、ミルクを持って来たメイドに「子猫に乱暴は駄目です!」と怒られた。
後日、新たなファミリーの仲間入りに興味を示した暇人共が、付けられた名前を聞いて揃って微妙そうな顔をしていたという。
作品名:ボンゴレさんちの猫ファミリー。 作家名:縞まる