【完全読み切り】家
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「レッド、起きなさい!」
母親に起こされ、彼は一日を始める。それがいつものことだった。
だから、今日も、呼びかけよう、として、彼女は思いとどまる。
「あの子は、いないんだった…」
彼の実力が花開き、彼はポケモンリーグチャンピオンになった。しかし、彼は、そのあとも丹念を摘むために、どこかへ旅立ってしまったのである。
置き手紙にはこうあった。
<いつか戻ってきますので、心配しないでください。また、僕の友人達にも、よろしくお伝えください。>
…彼は、いつからこんなに成長したんだろう。
昔は無茶ばっかやって、よくしかっていたものだったのに。
彼が、ロケット団を壊滅させたトレーナーのうちの一人になって、友人たちとそのあとも競い合って…。
彼の友人の一人は、現在トキワジムでジムリーダーをやっている。
彼の友人はみんな同世代でまだ未成年だから、どう考えても、成人と並ぶというすごい実力者であるわけだ。
その少年とは隣同士だから、幼いころから知っている。著名な博士の孫であるほかは、自分の息子と変わらなかった。仲良くいろんな所へ行っていた。そして、仲良くしかられていた。そんな彼も、今では、かしこまった、大人びた姿になる。
みんな成長した。そう考えると、なんか無性にさびしい気分になる。本当は喜ばなきゃいけないのに。
今日も、誰もいないのに、彼女は「おやすみ」といった。