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チョコレート
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novelistID. 7958
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こんなにも~伝えない気持ち5~

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あれ以来、何だか気まずくて、佐藤くんとあまり話をしていない。
あの日僕が泣いたことを、佐藤くんは察しているみたいだった。
直接言われたわけじゃないけど、何だか物言いたげな顔して、たまにこっちを見ている。

この前、偶然目が合ってしまって、
この間泣いたことバレたりしてないよね…?
と不安に思いつつ「なに?」と聞いたら、

「いや…なんつーか…、困ってることとかあったら俺に言えよ。相談くらいなら乗ってやるから」

って言われた。
……泣いてたのがバレてるって証拠。

だから、気まずくて話が出来ない。
ましてや相談なんて出来ない。
だって、泣いた原因は佐藤くんだから。


佐藤くんに心配してもらえるのは、正直言って嬉しい。
でも、僕の気持ちを知っても、同じように心配してくれるだろうか。

いや、きっと気持ち悪く思われる。前みたいに、バイト仲間としても、普通に接してもらえなくなるかもしれない。
そうなったら、耐えられない。嫌われるのは嫌だ。
でも、これ以上好きでいても、不毛な片思い。きっと、佐藤くんにとっては迷惑。
今はまだでも、そのうち轟さんに告白するんだろう。

どう考えても、僕はいない方がいい。
苦しくて、苦しくて、もう限界だ。



だから、店を辞めることにした。
どうせ想いは叶わないのだから。
もう二度と、佐藤くんにも会わない。その方が、佐藤くんの為。
でも佐藤くんはやさしいから、突然店を辞めたりしたら、心配してくれたりするのだろう。
そんなことしてくれなくていい。
やさしくされたら困る。
佐藤くんを早く忘れるために、辞めるのだから。




そうして、僕は店長の杏子さんに話しをした。
辞めたいという理由は適当にでっち上げた。
でも、キッチンの人を新しく入れるまでは無理だと言われた。

まあ、そうだよねぇ。ただでさえ人少ないんだし…。

仕方がないと思いつつ、あと少しだと思うと、寂しくもある。
そんな気持ちで今日の仕事をもうすぐ終えようとしていたとき、

「相馬。今日この後時間あるか?」

佐藤くんに、突然話しかけられた。

「え?…うん、大丈夫だけど、何?」
「ちょっと話がある。少しだけ時間いいか?」

なんだろう…?

そう思いつつも、断る理由もないので二つ返事でOKした。



バイトを終え、店を出た僕たちは、近くの公園に来ていた。
誰もいない公園。
ベンチに二人で腰掛ける。
沈黙がしばらく続いた後、佐藤くんが話を切り出した。

「お前、バイト辞めるって本当か?」
「えっ…」

驚いた。まさか佐藤くんがその話を知っているなんて。
杏子さんが話したのだろうか。

「それ、杏子さんに聞いたの?」
「ああ」
「そっか…」
「本当なのか」
「…うん、本当」
「………なんで」

低く、唸るように佐藤くんは言った。

「なんで辞めるんだよ。何か困ってることがあるなら言えって、この間言ったよな?」

佐藤くんの腕が伸び、僕の腕をつかむ。

「う・うん。でも…」
「何か不満があんならこの場で言えよ」

低く、低く、言い募る。

「あの…、そんな、不満なんて…」
「じゃあ何だ」

つかまれている腕が痛い。

「どうして辞めるんだ」
「さ・佐藤くん、怖いよ…」

言えるわけない、言えるわけないのに…

「俺にも話せないのかよ」

僕はただ、うつむいてしまう。

「……はぁ」

そんな、呆れたようにため息なんてつかないで…

「……………そっか」

僕の腕をつかんでいた手が離れていく。

「じゃあ、もういいわ。悪かったな、時間取らせて」

佐藤くんが立ち上がり、歩き出す。


行ってしまう。


そう思ったら、涙が溢れてきた。
佐藤くんは、こんなに僕のことを心配してくれているのに。
僕は何も、佐藤くんには言えない…。




佐藤くん…

佐藤くん…

好き

佐藤くんが好き

好き…

こんなに、こんなに…


「好き…………佐藤くん…」