運命なんてそんなもの
千景はいつもいつも、よく分らない衝動に駆られる時があった。
ごくたまに。
生活の一瞬に。
ときおり日常にちらっと見せる、訳の分からない焦燥。
しかし、千景には分からなかった。
分からなかったから、気のせいだと思っていた。
でも、それが間違いだと気づいたのは、帝人と出会ったからだ。
ほんとは気づいていた。
このままではいけないと。
だから、身体を暴力の中へ置いていた。
そして、癒されるために女の子たちに精神を置いていた。
ああ、でも、これからはその必要もなくなる。
千影は目の前に、ぼろぼろとなっている帝人にくらくらした。
なんで、そんな怪我とかしてるのだとか、なんで、そんな泣きそうなんだとか。
帝人が必至に何か千景に訴えているのに、千景の脳みそはスルーして彼の身ばかり案じている。
おかしい。
千景は自分がおかしいことを百も承知で、すべてを受け入れ、認めた。
そうだ、千影は帝人を探していた。
帝人という存在を。
なぜなら、千景の生まれた意味が帝人にあるからだ。
千影は帝人のために生まれ、死んでいく。
それが千景の定め。
千景はにっこりと笑う。
「会いたかったよ、俺のハニー」
作品名:運命なんてそんなもの 作家名:こん