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ボンゴレさんちの猫ファミリー2

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ソファの隅に丸まる蜂蜜色の毛玉。
 これだけ近付いても警戒心すら見せずに安穏と眠るそれに、彼はそっと手を伸ばした。










 段々と騒がしくなる屋敷内に、Gは思わず眉根を寄せた。
「何の騒ぎだ…?」
 侵入者かとも思ったが、それにしては逼迫した空気は感じない。
 どちらかといえば、遺失物を探すような――

「…今度はどっちだ」

 咥えていた煙草を握り潰し、執務室へと足を向けた。


 手を伸ばすよりも早く、内側から扉が開く。
「Gか。丁度良かった、お前もツナを探すの手伝え」
 飛び出さんばかりの勢いで部屋から出て来るジョット。
 猫の方だったか、とGは内心ごちた。

「また何処かで寝てるだけじゃねえのか」
 部屋の隅とかベッドの隅とかソファの隅とか。
「クッションの裏や枕の裏、洗濯籠の中も見たが居ない」

 何故そんな所に、と思わないでもないが、ジョットが拾って来た子猫はどうやらそういう場所が落ち着くらしく。
 大抵はそのどれかで小さな体を更に小さく丸めて昼寝していた。
 その何処にも居ないのなら、誰かに連れて行かれた可能性が高い。

 初めの頃はジョットに対しても怯えていたが、目も開き自分でよちよちと歩くようになる頃には屋敷の人間には大分慣れた様で、自ら人に近寄って行く事も稀に見られた。
 それでもそれは屋敷の人間に限られたし、その誰もが見ていないとなると確かにおかしいと思う。
 ひとりで外に出た?いやそれはあり得ない。
 あの子猫は人の目の届かない場所には決して行かない。
 だから本当に居なくなったのなら屋敷の中でなのだ。



「ちょっと。煩いんだけど」

「アラウディか」
 不機嫌丸出しで歩いて来るのは雲の守護者。
 昼寝でもしていたのだろう、一番上のシャツの釦は外され、上着を肩に羽織っていた。

「ツナが居なくなったらしくてな。どうやら屋敷に居る人間総出で探しているみたいだ」
「子猫一匹を?」
「ツナはファミリーだぞ」
 猫だけど。
 気が付いたらそのあどけない大きな瞳と愛くるしい動きで屋敷のアイドルと化していた子猫である。

「ふうん」
 アラウディはそれだけ返すと欠伸をしながらジョットとGの前を通り過ぎる。
 自分には無関係だ、探す気はないと態度が言っていた。


「――ちょっと待て、アラウディ」

 しかしジョットは彼を引き留めた。
 それも、低い声で。

「…何」
「その上着に隠された手を出して見ろ」

 ぴたり、と彼の動きが止まった。
 まさか。


「…みー…」

 微かな、本当に微かな鳴き声。
 渋々と振り返った彼の腕には、件の子猫が収まっていた。

「おい」
「だって僕が近付いても警戒心の欠片も無く眠っていたから」
 ちょっと借りて一緒に寝てただけだよ。

 いけしゃあしゃあとのたまう彼に、ジョットは眉を跳ね上げる。
 その手にはいつの間にかグローブが填められている。
 それを見たアラウディも臨戦態勢を取った。
 思わずGの口元が引き攣る。
 このままでは子猫争奪戦で屋敷が崩壊する。
 それは何としても避けなければならなかった。

「二人共、馬鹿な真似は…」
「みー。みにゃあー」

 何だか悲しそうな鳴き声。
 彼等は揃って子猫を見た。
 見てちょっぴり後悔した。

 何だかとても悲しそうな子猫の顔。
 猫は涙を流さないのは知っているが、流していてもおかしくない程に大きな目を潤ませている。

「…仕方ないな」
「…仕方ないね」
 罪悪感を感じたのか、ジョットもアラウディも互いに武器を仕舞った。
 そして飼い主の手元に返された子猫は二人を見て、Gを見て、眠りの体制に入る。



 ひょっとして、こいつを使えば喧嘩の被害が抑えられるんじゃないだろうか。



 他の誰に対しても子猫の泣きそうな顔と声が有効だと気付いた時、Gは思わず本気でそう考えていた。