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テーブルクロスを真っ赤に染めて

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まっさらな布地に染み込んでゆく色を見ながら、ライは微動だしなかった。だけどそれを色だといえたらどんなに良かったかと呆然と思う。今や暴走したギアスは両目に出続けていて、自分を蝕んでいるのがよく分かった。しかしそれが命だとどんなに良かっただろう、とこれも何度思ったことか。
視界が赤に染まったまま、それでもその布地に染み込んでゆく色を思い浮かべる。それが何色なのかさえ、もう分からない。瞼を閉じれば色は遮断されるけれど、まだ光は取り込んだ。
声はもう何日も発していない。ライを此処に匿ったノネットの意思に背くかのように暴走は確実にライの身体を蝕んでいる。

(死なせはしないくせに)

心だけが弱ってゆくようで恐ろしかった。それでも誰かと話すと傷つけそうで恐ろしくて、そしてまた自分が許せなくなるのが、どうしても怖かった。
ノネットはそんなライの心を解きほぐしてくれるけれど、ライはいつも心の中で謝罪をする。殺してくれ、とあの日の自分が叫ぶのをずっと堪えている。傷付けるのが怖いだなんて、そんなの偽善でしかない。脳裏で過ぎる映像は確かに幾人もの命を奪い、そして最愛のひとたちでさえ殺したではないか。そう語りかけてくる。

(・・・はやく、)

眠りが深い。
それだけが最近、繰り返される日々の中の救いだった。夢は見ずにすむ。なんて現実逃避だろうと苦笑するけれど、もうどうしようもない。これは報いだ、当然の。

そしてライは、何色に染まったかも分からないあのまっさらな布地の心配をしながら、わずかなまどろみへ意識を落とした。




お題配布元:不在証明さま