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とうふ@ついった
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煙る裏庭

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「体育のセンセイってさ、どうしてタバコ吸ってる人多いの?」

昼休み半ば、いつも通りに体育研究室に潜り込み、そして静雄のもとへやってきた臨也は不意にそんなことを尋ねた。
体育館と直結している研究室の裏に出ると、コンクリートの奥に草むらが茂っているスペースがあり、そこが教師たちの喫煙場になっているのは暗黙の了解となっていた。場所が場所だから、大体は体育教師が利用しているようなものだったが。静雄は休み時間には大抵そこにいる。この昼休みも例外でなく、そしてこれもまた例外でなく臨也に捕まった。

昼休みだというのに何も食料を持たないでただ自分の前で暇を持て余す臨也は不健康だ。
思わず自分が何かを与えてやりたくなる、と。脂肪はもちろんだが筋肉がついているのかさえ分からない。
ワイシャツのしわを眺めながら静雄は煙を吐き出した。
「知るか」
「答えるの溜めたくせにそれはないでしょー」
「タバコ吸ってちゃ悪いのか」
「だって保健の授業で副流煙とか受動喫煙とか言ってるクセにさ、体育教師のタバコ喫煙率高過ぎ」
正論ではあるが臨也が言うと全てに裏があると思ってしまうのは最早当然のことになっていた。素直に受け止められない。
「それ、俺に禁煙しろって言ってんのか」
「べっつにー」
「何なんだよ手前は」
喫煙場所には他の教師はいなかった。静雄は付き合いが悪い方ではないが、臨也と静雄が話している所を見ると大抵の教師はここには来ない。
「別にシズちゃん禁煙したって俺に何のメリットもないよ。ここ、タバコ吸う先生しか来ないでしょ?」
「そういうわけじゃねえけど」
「ここに来れば、シズちゃんに会えるもん」
思わず静雄は臨也の方を見た。コンクリートの上にダルそうに座り込む臨也は上から見ると本当に小さく、それなのに性分は最悪だから性質が悪い。
夏が近づいていて、先日短く切られた髪の先、首筋には僅かに汗がにじんでいた。
「ここに来なければ、手前に会わなくてすむのか」
「ひねくれすぎ」
ま、ここじゃなくてもシズちゃんに会えはするけど、などとくすくすという笑い声は遠くで聞こえた。風が一吹きする。生徒も教師もここには来ない。静雄の吐き出したタバコの煙は上へ上へと昇って行った。

「あ、そんなシズちゃんにこれプレゼント」
臨也は制服のポケットから物を取り出すと静雄の方へと放り投げた。静雄がいつも吸っているのより少し度数が低い銘柄のタバコが目の前に飛んでくる。条件反射で静雄はそれを手中におさめた。
「っ……! 手前これどこで手に入れやがった!」
「あはは、大目に見てよ。シズちゃんにあげるって言ってるんだからさ」
手をひらひらと力なく振って、笑っていた。静雄は一つ舌打ちをしてタバコの箱を握りつぶす。封は既に切られており、案の定一本だけ本数が足りなかった。
「吸ったんじゃねえだろうな」
「誰が好き好んでそんなまずいもの吸うのさ」
「吸ったんだな」
「やだなあ、味見だよ味見。もう一生吸わないけど」
校長に告げ口するのも警察に突き出すのもこの生徒に至っては全て無駄な行為だ。自分が咎めるのが恐らく関の山だろうと静雄はもう判っていた。溜息をつくとさっきまで吸っていたタバコの味が口内へ広がる。
「……こんな度数の低いやつ、吸えるかよ」
「あははーそれもう重度じゃん。今からでも間に合うでしょ。それでも吸って我慢してれば?」
「手前は俺に禁煙してほしいのか喫煙してほしいのかどっちなんだ?」
「んー……キスのときむせ返さないくらいには、してほしいかもね」
よくそんな発言があけすけに出来るものだと静雄は面食らった。誰も来ない。誰もこないからこうして自由にタバコを吸えるし、何より。

「あ、そろそろ授業始まるね。俺真面目だから、ちゃんと授業出なきゃ」
そう言うと静雄が反応する前に臨也は立ち上がってその場から動いた。結局何も食べていない。

いちいちその生徒の言葉尻を追って行くのにも疲れた。単に疲労感が勝るから現状を許しているわけではないのが気に食わなかった。
結局は絆されただけ。昼休み、自分だけの空間に彼の侵入に目くじらを立てないのは。
作品名:煙る裏庭 作家名:とうふ@ついった