psychedelic
頭の中で何かが廻る。
気持ち悪い。
ぐるぐるぐるぐる。
助けて、と叫びたいのに声が出ない。
身体が動かない。
ぐるぐるぐるぐる。
「よぉ、臨也。目ぇ覚めたか?」
「シズ、ちゃ…」
絞りだした声はひどく掠れていて。
自分でも聞きとるのは困難だった。
「ああ、水、飲むか?」
そう言ってシズちゃんは俺を見下ろす。
たぶん、見下ろしている。
目を何かによって覆われているから何も見えない。
手を手錠で拘束されているから身動きが取れない。
きっと何か薬を盛られているのだろう、身体が熱くてだるい。
床にごみ同然に俺は転がっていた。
座る事さえままならない為、寝転がっていた。
「飲めよ」
その言葉が聞こえた瞬間、顔に何か冷たいものがかかる。
「ん、ぷ…ふぁっ…」
「飲んだか?」
飲むも何も、上からかけられているだけで、そのうちの少量がたまたま口に入った程度だ。でも、それだけでも俺には充分だった。
「は、ぁっ…シズちゃぁっ…熱い、よぅ…んっ」
身体中を巡る熱い波に耐えながら俺は言った。
シズちゃんはどんな表情をしているんだろうか。
見たい、触れたい。
「ね、これ…とってぇ…?おねが、顔、みたぃ…」
そう懇願すると突然腹に衝撃。
「ぅ、ぐっ…!?」
「黙れよノミ蟲。蟲ごときが命令すんな。」
「っが、はっ…う、ごめ…な、さ…ぅあ…」
ぐるぐるぐるぐる。
目が廻る。
身体が痛い、重い。
「なぁ、臨也…俺は手前を愛してるんだぜ…?」
「ん、っふ…ぁ…俺も、だよ…」
そういうとシズちゃんは薄く笑って俺を撫でてくれた。
ぐるぐるぐるぐる。
俺の中で廻り続ける想いと、君の中に渦巻く想いがどうか、
どうか同じでありますように。
作品名:psychedelic 作家名:89