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眠れない夜の話

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眠れない夜の話

すごくアルフレッドのことを好きだと思う事がある。
それはそばにいるときだったり、遠く離れているときだったり、キスしてるときだったり、喧嘩してるときだったり。意味なんてない日常のふとした瞬間、ああ僕はアル君の事がすきなんだなーとイヴァンは思う。
 
けれど、それよりもまれに、本当に時々アルフレッドの事がどうしようもなく憎くなる時もある。というより、きっと彼のことを憎くくてたまらないのが本当で、好きな事の方がおかしいのだ。ずっと仲は悪くって、喧嘩して、負けて、彼のせいでイヴァンの家はばらばらになってしまった。殺したいほど憎くってもおかしくないし、それはアルフレッドだって同じのはずだ。

なのにどうして今こんなことになったんだろう。
自分を抱きしめながら眠るアルフレッドをみて、イヴァンはそっと溜息をついた。アルフレッドはたまに何の意味もなく、イヴァンの家にやってくる。
新しいゲームをやろう!だとか君の国を観光しに来た!だとかいつもくだらない用事ばかりで、まるで嵐の様にイヴァンを振り回して、夜にはまるでお気に入りのぬいぐるみのようにイヴァンをぎゅっと抱きしめて眠るのだ。

いつも好きだ、愛してる、キスしよう!なんて恥も外聞もなく叫び、実行をするくせに、せいぜいディープキス止まりでアルフレッドはイヴァンに手を出しては来なかった。
最初は理由をいろいろ考えた。子供っぽいところのあるアルフレッドのことだ。セックスなんてしらないとか?なんて理由も思いついた。けれどいくら若いと言っても彼も何百年も生きた国だ。しかも兄はあのアーサー・カークランド。セックスを知らないわけはない。
そうして考えているうちにイヴァンは一つの結論を得た。驚くほど単純で、明白な答え。アルフレッドはきっとイヴァンのことをそういう意味で好きではないのだ。彼にとってイヴァンは本当にただのお気に入りのぬいぐるみ。ずっと敵対してて、憎しみ合っていたからこそ、仲良くなった自分が物珍しくてしかたないのだろう。
キスなんて挨拶だし、ディープキスだってイヴァンの国では昔挨拶だった。
 
きっとアルフレッドは自分のことなんて好きじゃないのだ。
けれど、そう自分に言い聞かせるには、腕の中は温かく幸せすぎた。

ぐっすりと眠っているアルフレッドの顔を眺める。
今は閉じられた瞳がどんなに雄弁かイヴァンは知っている。
敵対していた時は、その冷たい青を、まるで氷の様だと思っていた。会議で口論するときその瞳は青い焔のように燃えて見えた。けれど、菊やアーサーなど仲のいい国と話すときは明るくきらめくし、こんな仲になってからは、驚くほど優しい瞳でこちらを見つめるときがある。
・・・そして、キスをするときはどこか攻撃的だ。明るい青をギラギラと欲望に染めて、イヴァンはいつも食べられてしまうんじゃないかと思う。
 
(やばい・・・かも)
アルフレッドの腕の中で、しかも息がかかるほど近くに彼の顔があるのに、キスの事を思い出してしまうなんて。
キス、したいかも。
目が閉じてるのが残念だな・・・、そう思いながらそっと顔を近づける。
軽いバードキスを何度してもアルフレッドは目を開けない。

(こういうときすっごい憎らしくなるんだよね。殺したくなるくらいに)

物騒な事を考えながら、イヴァンはそっとアルフレッドの鼻をつまみ、その薄く開いた唇に深く口づけた。

最初は何の反応もなかったが、途中で起きたのだろう、アルフレッドはイヴァンの舌に応え始めた。しかし、途中で苦しくなったのか、鼻をつまむイヴァンの手を離そうともがきはじめた。
イヴァンは手を離すことなく、真っ赤に染まるアルフレッドの顔を見下ろす。
(噛めばいいのに。僕の舌を思いっきり噛んでしまえば、すぐに離れてあげるのに・・・)
キスの激しさはますます増すばかりで、アルフレッドは苦しいだろうに、そんなことを思いつかないようだった。

 
(好きだよ)
 胸の中に湧いた言葉を殺しながら、そっと唇を離す。
   
   たとえ君が僕のこと好きじゃなくても。
作品名:眠れない夜の話 作家名:田中 塩