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リオ・ナユ

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・・・何でも食っていた・・・化物でも・・・い、いやいや気にするな、皆食べても元気そうだし、美味しいし大丈夫だ、とぶんぶん頭を振って完食した。

隣のリオはナユと違ってあれこれ頼まず、単純な料理を一品だけ頼んで食べている。
元々さほど食べる人ではないが、多分リオもテッドの話を覚えているのだろう。
さすがのナユも、肉まんだけは船の中であろうが注文しないでおこうと思った。


その後ナユは掃除や調理の手伝い等をした。
家事全般ならどちらかといえば得意だ。
そろそろ自分達の部屋の位置も覚えたし、一人でも問題ないだろうと思って、訓練所に向かったリオを見送ってから率先して色々な所で手伝いをした。
皆見た目は怖くてもいい人が多いようで、よくナユに声を掛けてくれた。

紋章屋ではかなり見覚えのある女性を見たが、知らない振りをした。
勿論この船にもビッキーはいたが、多分色々と時空を越えたテレポートをしているであろう彼女の事、普通なら自分の事を知らないだろうが念の為知らない振り、というか近寄らないようにした。
ただ、元の時代に戻ったら、ジーンさんについて硬ゆで卵おっさん使ってちょっと調べてみようかなと思ったり。

「ふーっ。」

デッキも一通りモップがけ終了し、額の汗を拭った。
ふと違和感を感じ、ここに来るときに無くさぬ様にと金輪もスカーフも置いてきたことを思い出した。
殺戮魔も頭にはいつものバンダナどころか何も着けていなかった。
カイリも2人のトレードマークがない事もあって、過去で会ってたのが自分達だと特定できなかったのかもしれない。
自分はたまたまだが、あの人の事だ、それも考え済みでバンダナを着けていない可能性は高い。

「・・・それにしても、黒い髪をそのままにしているのもなんだか新鮮で、なんか、カッコいいかも・・・」
「・・・何がカッコいいんだ?」
「っうわあ!?」

不意に後ろから声をかけられてナユは驚いた。
見ればうわっと耳を押さえているケネスがいた。

「あ、すいません。びっくりしたもので・・・」
「いや、まあ、別に構わないが・・・。あ、どうだ?もう慣れたか?」
「はい。ありがとうございます。」
「そうか、それは良かった。なんだ。掃除してくれてたのか?ありがたいが別に躍起になって働いてくれなくても構わないぞ?」
「そうですか?でも家事系ならそんな苦じゃないですので。割と得意ですし。」
「へえ。そういやカイリも得意だったな。」
「あ、えと。誰かにカイリさんって昔領主か何かの下で働いていた事があるって聞いたんですけど。」
「あ?ああ、まあな。確かに召使みたいな事やらされてた。」
「今はリーダーじゃないですか。自分のやらなければならない事に凄くギャップがあるんじゃないかって思うんですけど、ケネスさんから見てカイリさんって何か変わられたとことかありますか?」
「?変な事聞くのな、お前って。新聞記者のペローにインタビューされてるような気分だ。まあ、いいけどな。・・・そうだなあ。」

ケネスという青年は真面目なのだろう。
ナユのようなただの漂流していた子供が聞いた事でも真剣に考え答えてくれようとしている。

「基本的には何も変わってない、かな?あいつは昔から色々才能あったし、学校でも成績は良かった。船での模擬戦の時なんかはよく皆に頼られて、あいつ自身も的確な指示を出したりしていたなあ。あ、でも普段は凄く控えめで無口だったんだぜ?その領主の息子、スノウってんだけど、スノウのお付きみたいな事をしていたからだろうけどな。同じ学校に行ってたから、要は四六時中人の後を付いて世話してなきゃなんない状況だった訳だ。今はそれがないから、控えめってな所は見当たらないな。」

笑いながら説明してくれた。
ケネス自身もカイリの事慕っているのだろう。口調に出ていた。
ナユは微笑んで言った。

「ああ、そういえば僕も口説かれていたようですもんね。」
「ははは。まあ、許してやってくれ。あいつな、えーとその何だ、ちょっとしたきっかけで、今を存分に生きようと思ってるみたいな所があってな。まあ、そういった楽しみ方も遠慮せずしておこうと思ってるようだ。」

・・・きっかけ・・・。

罰の紋章の事だろう。
そうか、そんな事情でああいったカイリが出来上がったのだろう。
で、無事生き延びた後もずっとそのままできちゃったのだろう、かな。

「あ、そうなんですか。・・・えーともしかして、何でもアリなんですか・・・?男からされるってのもOKなんでしょうか・・・?」

少なくとも今はそうだけど、と思いつつ聞いてしまった後で、何聞いてんだ自分は、と赤くなった。

「え?あ、ああ、いや、そこまではいってないぞ?男でも女でもOKの両刀とはいえども、さすがにな。まあ、心配するなよ。そういう訳だからお前のうみをとられるって事はないと思うぞ?」
「は?あ、ああそうですか・・・はい、ありがとうございます・・・。」

変な事を聞いたせいか、変に受け取られた。
まるで自分があの人をとられるのを心配しているみたいに。
仕方なくとりあえず礼を言っておいた。ケネスはそれじゃあ、と去っていった。

・・・さすがに元々そこまで無節操だった訳ではないんだなーと変に感心しながら、ナユもモップをかたずけに行った。
カイリさんもどうやらリーダーになる前から才能があったんだ。
殺戮魔といい、カイリさんといい、やっぱり元々凄い人だったんじゃないかなあ、なんで自分は彼らと同じ星の元、同じくリーダーなんかやっているのだろうと、ナユは少し落ち込みかけた、が、思い直した。

ま、自分には自分の良い所があるのだろう、きっと。
自分では中々分からないけれども。
そうでないと、逆に自分を信じてついてきてくれている皆に失礼だろうしね・・・。
・・・なんだか妙に晴れやかな気分になり、口笛を吹きながら船内を歩いた。

「よう。何だかご機嫌だな。」
「あ、こんにちは、ハーヴェイさん、シグルトさん。」
「こんにちは。もうこの船には慣れたようですね。」
「うーん、まだ少し迷いそうですけどね。」
「へえ・・・。」
「?どうかしましたか、ハーヴェイさん?」
「いや、何。何かよォ、昨日よりなんつーか、悟ったっつーか、すっきりしたっつーか、何かそんな感じがしてよ?」

確かに。
ナユも自分ながらに思った。
もやもやしたままこの時代に来た訳だし、今朝も色々考えていた。
そして何一つすっきりした答えが出ていない筈なのになんだか心が軽い。
考えないようにして自分じゃない自分になったまま行動したり、人と話したりするのは、妙に気が楽だった。

無責任?
いや、また違うけど、確かにそれに近い気楽さがある。
その上軍主でなく一住民でいられるし。
このハーヴェイって人、頭軽そうに見えてなかなか深い人なんだな、とナユが感心していた時、そのハーヴェイがサラッと言った。

「やっぱアレか?久しぶりにヤッてすっきりした、とかか?」
「・・・。」

ナユは笑顔のまま固まった。
ハーヴェイの横でシグルトが手を顔にあてて首を振っている。

・・・前言撤回。この人、ただのバカだ。
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ