リオ・ナユ
「今の持ち主はおんしかぇ?あやつはもうおらんのかえ?」
「・・・ああ、いや?いますよ?一旦はいなくなりましたがね。知り合い、だったとはね。」
ナユは聞き間違いかと思った。
あの殺戮魔が敬語・・・!?
今までどんな相手であれ敬語なんて聞いた事がない。
そうとうびっくりした顔で見ていたのであろう、シエラがク、と笑った。
「・・・何、その顔?貴様の間抜けな顔がますます間抜けになってるよ?」
「なっ。だっ、だって今、敬語っ。」
「・・・僕は一応マナーも学んだものでね、それなりに敬意を払っただけだよ?彼女は古くからの真の紋章の持ち主であり、吸血鬼の始祖だからね。」
「え?し、そ・・・?」
「わらわが最初の吸血鬼、という事じゃ。」
「・・・え?そ、それって・・・?」
「すべての吸血鬼の祖先たる祖先じゃ。」
いったい、いくつなんだろう・・・ナユはポカンとして思った。
とりあえずはものすごい人なんだと分かった。
それと・・・もともと女性に対しては物腰がやわらかい殺戮魔である。だが敬意を払う殺戮魔・・・。
まだまだリオの事、分かってないものだとナユは思った。
しかし、とりあえずこれで、ネクロードに対しての勝算が見えた。
クロムの長老の家に戻ると、クラウスが出迎えてくれた。
「もどられましたか、ナユ殿。」
するとシエラが前に出て、クラウスをじろじろと見る。
「?こちらの方は?」
「ああ、こいつは・・・」
言いかけたビクトールを遮り、シエラが言った。
「わたしはシエラと申します。旅の途中だったのですが、女の一人旅、狼藉者に襲われていたところをこちらの方々に助けていただいたのです。」
「そ、そ、それは・・・大変でしたね。」
「えぇ。あなたもこちらの方々のお仲間ですか?お名前は?」
「え、えぇ・・・クラウスと申しますが・・・・・」
「まあ、素敵なお名前ですこと。」
クラウスがさがればシエラが進む。
「わ、わたしはシュウ軍師への報告をまとめなければ、い、いけませんので、し、し、失礼。」
そう言うと、クラウスは逃げるようにしていなくなった。
「ほほほ・・・・・、かわいいこと。」
呆れたようにビクトールが言った。
「前途有望な若者をたぶらかすなよ。」
「さぁてわらわは疲れた。眠いぞよ。」
「て、無視かよ。」
ビクトールがつっこむなか、シエラはまたもや無視をして、はよう部屋に案内せい、と言っている。
・・・「シソ様」は、なかなかいい性格のようである。ナユは呆れたようにそれらを見ていた。
「なんじゃ?ちょうどよい、ナユが案内してくれるかえ?なんじゃったらそのまま丸くなって眠ってもよい。」
耳か!?耳をからかっているのか!?
「シエラ。コレをたぶらかしても何もいい事はありませんよ?僕が案内しましょう。」
リオが案内役を買って出た。
やはり耳慣れない。
同一人物とは思えない。
ナユがそう思っているなか、リオはシエラをともなって2階に上がっていった。