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リオ・ナユ

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「けっ。そのニヤついた笑いが二度とできねぇように、バラバラに切り刻んで!すりつぶして!日に乾かして!粉々にして!土に埋めて!上からションベンかけて!それから掘り起こして!ひっぱって!のばして!ひきずりまわして!それから、それからぁ・・・とにかくてめぇだけは、ゆるさねぇぞ!!!!!」
「・・・長いですよ・・・」
「途中で訳が分からなくなってるよね?所詮熊の頭ではそんなものか。」

ぼそっとナユとリオがつっこんでいた。

「・・・相変わらず下品な男だ。しかし、忘れないで欲しいですね。わたしには人質が2人もいることを・・・」

そう言ってネクロードはナユたちに背を向け、歩き出そうとした。
すると地面に円陣が浮かび上がり、ネクロードの行く手をはばんだ。

「こ、これは」

ネクロードがつぶやいている時に、カーンがやってきた。

「名演技でしたよ、ビクトールさん。おかげで準備が出来ました。」
「きさまは、カーン!!」

名演技、ねぇ、とナユ達がつぶやいている中、ネクロードが憎々しげにカーンを見た。

「マリィ家がこの日の為に代々、研究を重ねてきた結界です。これで“現し身の秘法”は使えませんよ。」
「お・・・おのれ・・・。だが、わたしには“月の紋章”の力がある。いけにえにはじゅうぶんだったからな、こんな結界など、吹き飛ばしてくれるわ。・・・我が月の紋章よ、100人の血と、100人の命を・・・」
「我が月の紋章よ、そのいまわしき力をしばし封じ眠りにつけ。」

そこにシエラが唱えつつ現れた。

「ま、ま、まさか!!シエラ長老!!!!」
「400年前、わらわより盗みとりし紋章を返してもらおうかのぉ。その紋章の呪いをこれ以上、広めぬ為にな。」
「く・・・」

そこにビクトールがさも小気味良さげに言った。

「さあて、言ってやる。言ってやるぞ。“やい!!ネクロード!!年貢の納め時だぜ!!!!”くーぅ、よっしゃあ!!この時がくるのを、どれだけ待った事か!!!」

そして星辰剣をかまえた。

「おのれぇ・・・こんなところで潰えてたまるものかぁ!!!!わたしは!わたしは!!永遠を生きるのだぁ!!!!!」

そして戦闘が始まる。

ネクロードが永遠を生きる、と叫んだ時、リオがピクリと小さく反応していた事にナユは気づいた。
・・・永遠・・・。
そうだ、ね・・・リオは、望まずとも、永遠を・・・。

戦闘開始早々、リオは破魔を放っていた。高い魔力に、アンデッドに2倍の効果のある魔法。
いつの間に宿したんだろう?昨日の時点でそんなもの、宿していたっけ・・・?
それにしても今回も棍での(もしくはナイフでの)攻撃が大好きなリオが魔法を使っている。
珍しい。いったいどうしたんだろう、と思いつつ、ナユは輝く盾の紋章を使おうとした。

「貴様の紋章などいらない。ムダに低い魔力わざわざ使って攻撃したり、全体回復使うよりも、あいつは女ばかりを狙って血を吸いにきたり、個別攻撃が多いから、おくすり使って個別に回復しろ。」

リオが命令するようにそう言ってきた。
何か言い返そうとしたが、リオの言い分ももっともなのかもしれない、と袋の準備をした。
結局リオとカーンの破魔と、シエラの電撃のおかげもあり、決着は早々についた。

「お・・・おのれ・・・。」

ネクロードはそう言って消えようとした。だが結界に阻まれる。

「逃げられないと、言ったはずです。我が祖父が作り、我が父が伝えし技術だ。破れるものですか。」

カーンが言う。

「ひ・・・ひぃ・・・シ、シエラ様・・・・お許し・・・お許し下さい。紋章は・・・お返ししますから・・・・・・」

ネクロードは情けない事にそう言った。シエラがフン、と鼻をならし言う。

「ならば、はようせい。」
「は・・・はい。」

月の紋章が浮かび上がる。美しい青が輝く。
そしてネクロードからシエラへと、紋章は渡った。

「確かに。・・・・・・ビクトール。わらわの用は済んだ。おんしらの好きにしてよいぞ。」

その瞬間、もともと顔色の悪いネクロードの顔色はもっと土色となる。

「そ・・・そんなぁ・・・ひ、ひぃ・・・う、うそ・・・・・」

ビクトールがじり、と歩く。

「てめぇに殺された俺の家族、俺の友人、俺の大切な人々。それだけじゃねぇ。その何倍もの人間の命をきさまは踏みにじってきた。命乞いしても遅すぎる。おい、星辰剣。」

そう言って、剣を持ち上げる。

「滅びよ、吸血鬼。」

星辰剣が唱えた。
ビクトールが剣をふるう。
そして・・・・・・ネクロードはちりとなって、消えた。

「ゲス野郎め・・・・・・。」

ビクトールがつぶやく。カーンが言った。

「これで・・・・・・やっと・・・・・・終わりましたね・・・・・・。」
「そうじゃのぉ・・・・・・」

しばらくシーン、としたが、ビクトールが気を取り直して言った。

「さぁ、もどろうぜ。ネクロードは死んだ。こんなところにはもう用はないさ。そうだろう、ナユ、リオ。」
「そう、ですね。」

そしてナナミがリリィを慰めながら、皆で教会を出た。
歩いている時にナユはリオに聞いた。

「破魔の紋章なんて宿してましたっけ?」
「ああ、これね?昨日ちょっと城に、ね。」
「は?いつの間に!?てゆうかどうやって!?」
「貴様の鏡をちょっと拝借した。だって出かけないって言ってたろ?」
「そ、そりゃそう言いましたが・・・いつの間に・・・?」
「貴様の鈍さじゃ分からなかったんじゃない?」
「なっ。」
「夜にはちゃんと元の場所にもどしておいたから。それにしても本当はジークフリードの“白き聖女の紋章”を借りようと思ったんだよね。なのにあの駄馬、人に貸せないなどとたわごとを言ってたから、ちょっと野菜隠して生肉置いてきてやった。」
「あ・・・あなたという人は・・・。だいだい彼は馬じゃなくてユニコーンです。それに当たり前でしょう、あんただってソウルイーター、人に貸せるんですか。」

ナユの脳裏に思わず血まみれの生肉が思い浮かんだ。それに対して唖然としている、野菜が大好物なジークフリードと。

「馬だろうがなんだろうが、どうでもいいよ、あの女好き。」
「・・・。だいたいなんで彼の紋章を借りようと思ったんですか。」
「そりゃネクロードに効果があるからに決まってる。それになんか僕に似つかわしいしね?」
「・・・。どこをどうとったら似つかわしいんです・・・?あなたにはソウルイーターがぴったりだと思いますけど?」

そう?とまんざらでもなさげにニッコリとリオが笑った。
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ