リオ・ナユ
「まったくほんと危ないなぁ。」
「そうそう、リシュ。ナユはリオと付き合ってるからね、あまり下手な事はしないほうがいいと思うよ?」
「いや、そこ、お前が言ってもあまり説得力、ねぇ。」
ニッコリとして言ったカイトに対してテッドがつっこんだ。
「心外だな、テッド。俺がいつ下手な事をした?」
「僕も心外だよー。ただ可愛らしいと思ったから抱きついただけなのに。」
「ふむ、俺とそういうところでは気があいそうだね?」
「ちょ、変なとこで意気投合しないでくれる?」
ルックもつっこむ。
「めんどくさい。いっそ消えとく?」
優しげと、知らない人が見たらいいそうな素敵な笑顔でリオが言った。手が黒い。
「ちょ、おまっ・・・」
テッドが慌てたように言うがリオは無視して手を上げる。クッといいつつテッドも慌てて手をかざした。
「冥・・・「静かなる湖っ」」
ゆっくりとした動きだった分、焦ったテッドの方が早かった。テッドは息を切らしている。
「て、今の、ここにいる全員どこかに送る気でしたよね!?」
ナユがとりあえずじたばたとリシュタートから逃れてからリオに突っ込んだ。
「だって、めんどくさいし・・・」
めんどくさいしじゃねぇえ。テッドおよびルックは心の底からそう突っ込んだ。
「相変わらずだねぇリオは。」
「そうなんだ、相変わらず、なんだ。」
カイリとリシュタートはのんびりと言っている。
「まったくいい加減にしてくださいこの殺戮魔。とりあえずしばらくこちらにいらっしゃるのであれば城内をご案内しますが・・・」
思いのほかナユはさらりと流してリシュタートに向き直った。
「え、ほん・・・」
「ああ、いい、いい。」
今回もルック、テッドが綺麗なユニゾンにて答えた。
さすが新旧の天間星、つっこみだけでなく、意外にも息があう。
「案内ならサラッとすでにしたから。さっきのルックの最終的にここに集まるってのも、皆でぞろぞろ案内後ここにたむろってたからだろうね。」
その後をにっこりとカイリが継いだ。
「え、あれ、案内!?ものっそいあっという間に流されたような気がするんだけど?」
「気にするな。」
リオもニッコリと言った。
「で、ゲオルグさんはどちらに?」
「ああーゲオルグならレストランだよ。さっそくここの味を試すんだって。」
ナユの問いに、リシュタートがにっこりと言った。
「ああ、そうですか、ここのレストランはなかなかのものですよ。うちのハイヨーの腕は確かです。」
「ハイヨー・・・?」
「?どうかされたんですか?」
「ああ、いや、気にしないで。まあゲオルグの場合は料理っていうか・・・」
「「チーズケーキだから」だろ?」
今度はリシュタートとリオが被ったがあいにくそろいはしなかった。
天魁星は個性が強いのが売り物だからであろうか(関係ない)。
「そういえば山でもそう言ってましたが・・・何なんです?」
「ああ、君もこれから嫌ってほど知るようになるよ、あのゲオルグの異常なほどのチーズケーキへの愛を。」
「は?」
「リシュ、お前の言い方はいちいちくどい、ウザいよね?」
リオはニッコリと言った。
リシュタート・ファレナス。
太陽暦449〜450年に起きたファレナ女王国の、簡単に言えば内乱を収め、国を奪還した王子である。
その後しばらくは女王騎士長代行をしていたようであるがある日それを正式に義理の弟となる者に譲り、旅に出た、と後でナユが図書館で読んだファレナ女王国の歴史書には書いてあった。