狂っている
腹が、腰が、心が、悲鳴をあげていた。
「っぅ、」
痛みによって無理矢理覚醒させられる。
此処は何処だろうか。
過去に一度だけ見たことがある、入った事がある気がする。
「あぁ、起きられましたか、おはようございます」
声のする方に目をやると其処いは一見何の変哲もないただの高校生。
でも、その目には鋭い光、口元には歪んだ笑み。
「み、かどく…、なん、で…?」
上手く喋れないのは口の端が切れている所為だろう。
そうか、此処は彼の…帝人くんの部屋か。
「なんで、って。何がですか?」
「おれ、なんで…こ、こに」
ああ、と帝人くんは手を打つ。
「臨也さんがあまりにも僕の事を見てくれないので、連れてきちゃいました」
にっこりと微笑んで言う彼に、嫌な予感がしてならなかった。
「ねえ臨也さん、俺と一緒に暮らしましょう?」
床に事がっている俺の傍に膝をつき、右手で傷だらけの俺の頬を撫でる。
「っひ、ぁ…帰り、たい、シズちゃ、や、しず、ちゃぁ」
「…また静雄さんですか。」
優しい手つきで頬を撫でていた手が止まる。
ぱしん、と乾いた音が部屋に響く。
「いた、っ…」
「…仕方の無い人ですね…僕の事しか考えられないようにしてあげますよ」
その言葉に背筋が凍った。
でも、頷くしかなかった。
小さく顔を縦に動かすと彼は「いいこですね、…ご褒美、あげます」と俺に口付けた。
嗚呼、これが君の望んだ“非日常”なんだろうか。
壊れている、狂っている。
俺も、君も。