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【ヘタリア】 くびすじのきず 【菊菊?】

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首筋の傷


兄様はあまり肌を見せたがらない。夏場にだって襟付きの薄手の長袖シャツを着ていたりする。それか和服か。

「暑くないですか」
「暑いですよ。夏なのに寒かったら大変だろ。ただでさえ最近は冷夏だの暖冬だので作物がうまく育ってないのに」
「いえ、そういうことではなく」
「どういうことだ?食料の確保は国防に匹敵する重要問題だと思っているんだが」
「あの・・・いえ、なんでもありません」
「?そうか」

理由を聞いてみてもこの通りなのだ。兄様はどうも私以上に食い意地が張っている。それは貧困層に数えられそうな農民や漁民を尋ねて回っていたり、食糧危機が原因で戦が起こっていたことが原因なのかもしれないけれど一時期大陸にまで足を伸ばし亜細亜の覇者になってかわろうとした兄様がいまや家庭菜園に明け暮れる姿は、シュールだ。そういえばあのときも一番最初のきっかけの一つに冷害による食糧難があったような気もする。私自身が食べ物のことにかかわることに対しては本気を出す、つまりそれ以外はのらりくらりとやっている、という認識を国民・・・下手をすれば世界レベルでもたれているのに兄様はどうやらそれを上回るつもりらしい。それでいいのかといいたいところだが、それをいうとならもうすこし国防に関して力を入れるか食料の輸出入を云々と素人考えを言われるから言わない。どちらも微妙な均衡を保っての今だというのは兄様も分っているらしいけれど小言は絶えない。

「菊。少し裏に行ってきます。今年はスイカを2株植えてみたんだ。うまくいけば夏の盛りにはスイカ三昧だ」
「そうですか、たべきれなくなったらおすそ分けしてもいいですか」
「とうぜんだ。でも味の分るやつにしろよ。ヴァルガスやボヌフォアならいいだろう。湾娘や王師匠にも食べてもらいたいな」
「はいはい、そんなにたくさんできるんですか?」
「安心しろ、俺はすいかなんて一夏に1度食べれば十分だ」
「何で作ったんですか」

兄様は耀さんのことをセンセイとよんでいる。あのひとと切っても切れない関係ががって影響を受けたりもらってた文化がたくさんあることが無意識に現れているのではないかと思う。

「兄様、帽子はかぶって・・・あら?いない・・・」

兄様の行動はいつも静かだ。こうやってさっきまでそこにいたのに気づけばふらっとでかけていたり、いないものだと思ってたら隣の部屋でごろ寝していたり。ほかにいく当てはないらしいから突然消えてしまう心配はないものの行方が分らないと不安になるということを彼はまるで理解しない。私がいる場所は兄様はすぐにわかるから私も兄様の居場所くらいわかると思っているのだろう。私と兄様との間柄は推測が大きく横たわっている。



午後になってずいぶんすぎまだ兄様が戻らないから私は裏の畑に様子を見に行くことにした。畑は兄様の独壇場になってしまって私はめったに言っていない。

「兄様?」

普段なら畑の真ん中で無心に草を抜いて水をやって丹念に世話そしている兄様の姿はそこにはなかった。

「あにさまぁ?」

声を上げても、返事はない。蝉時雨がうるさいくらいにないている。油蝉の声はどうしてああも暑苦しく感じるのだろう。暑苦しい時間になくのが油蝉と身体に染み付いているのか。アレでなかなかおいしいのに。あぁ、かえるの子は蛙。兄様の兄弟はやっぱり食い意地が張っているようです。イナゴもおいしいですよね・・・

「あぁ、兄様」

畑からは離れた木の影に兄様は座り込んでいた。ただの休憩かと思ったのにいくら呼びかけても起きる様子はなく、触れた身体はどこか冷たく感じた。
兄様、兄様と呼びかけて身体をゆすってもまつげを震わすことさえない。兄様、何度目かの呼びかけで兄様はうっすうらと眼を開いた。かすれた声、乾いた唇でなにかいったのに私にはそれが聞き取れないで、しっかりしてください、といい加減に返した。「俺の名を覚えているか、菊」二度目に兄様が言った言葉は聞こえた。聞こえたけれど錯乱気味の私にはその意味が分らず、兄様すぐに水を持ってきます、と返していた。
500mlのスポーツドリンクのペットボトルをもって再び兄様の元へ戻ったとき兄様は普通の熱中症のようにぐったりとして熱のこもった身体をしていた。兄様はペットボトルから一口だけ水を取ると私にもたれかかるように倒れて機を失って眠ってしまった。兄様の着ていた着物の上を肌蹴させ応急処置にスポーツドリンクを首筋に当てようとしてふと、そこにある傷に気づいた。首の骨と垂直に横に真っ直ぐある深い傷の跡が火照る身体に浮いていた。まるで亡霊に横切られたようにヒュっと肝が冷え手が止まった。兄様が弱いうめき声を発して我に返った後兄様を横にしてからペットボトルを首の下に置いた。私はもう一度家へ戻り氷とタオルを持ってくることにした。
私の知るところではないが立ち去る私の後姿を兄様はぼんやりとした瞳で見送っていた。それは夏の熱気に浮かされたものなのかどうなのか、私は知らない。