二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

どこかに隠せるものなら隠して、腐敗するまで

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「なんて顔してるんだ」

不意をついて振ってきた言葉に瞠目する。
声が聞こえたのかこちらを振り向く姿にあわてて視線を逸らした。
今更ながら曝された気持ち、露出した感情。


『どこかに隠せるものなら隠して、腐敗するまで』



人を愛すると言う事は、決して悪いものではなくむしろ生きるという上では大事な事なのだと思う。しかしながら自分の中に芽生えた感情がかならずしも正しいというわけではない事を私は知っている。そう、この感情は露出させてはいけないのだ。
一つ、息を吸って目を閉じる。
吐き出した吐息とともに目を開けると、ほら、いつもの自分に戻っているはずだ。
唇の端を少し持ち上げる。大丈夫、震えてなんていない。

「私の顔に何か不服がありますか?」
「…いや、いいんだが」

少し驚いたような、困ったような表情。けれども、それすらも気づかない振りをして笑みを投げかける。露出しては駄目。これは見せてはいけない感情なのだから。
ゆったりとしたアーサーへと視線を向ける。彼は私とフランシスを見つめているも何があったのかわかっていない様子で、なぜか少し怒っていた。
彼はいつも少し怒ったような、どこかぶっきらぼうとも取れる様子で接してきては、言いたい事をまくし立ててからはっと気づいたようにこちらを見る。私がそ知らぬ顔であしらうと顔を真っ赤にして怒り出す。
小さく笑みがこぼれた。思い出し笑いをするのは助平な証拠だといったのは誰だっただろうか。意地っ張りな彼はいつの間にか自分の心に居座り続け、とうとう心の片隅を乗っ取った。これは――事実だ。

「…二人で何話してるんだ」
「そりゃ、今夜二人で過ごす時に飲むワインについてだろ」
「っ…!な、そんな事ゆるs…」
「ありえませんから」

軽口の応酬にほっと小さく息をつく。自分の位置は変わらない。このままの位置を保ち現状を維持する、それが最良。

「どうした?本田」
「……いえ、私の顔がおかしいと指摘をいただいたので、少し気になっただけです」
「何言ってんだ、お前の目は節穴だろう。フランシス」
「いやー、そういう意味じゃないんだけどなァ。アレだ、おにーさん的にはすごーくこう抱きしめたくなるというか、その先に進んでしまいたくなるというか…。まあ、そんな顔してるといいたかった訳なんだけども―っ、暴力は反対!反対!」
「反省しろ!そこに土下座して反省しろっ!」

踏み出すのが怖いだけじゃない、始まりがあれば終わりが来る。
もしこの関係を超えて進んだとしたのなら、その先に待っているのは今の関係をも覆すほどの終局。二度とあなたと話ができない、そんな覚悟が今の私には持てないから。
逃げ出す事を許して欲しい。まだ、この緩やかな居心地のいい場所にいたいと思う私を。
踵を返し進みだす。もう、振り返る事は無く。

「あっ、オイ!待てよ!」
「あ~あ逃げられちゃったな~」
「黙れ!追いかけるぞ」

心の隙間に埋めてしまいこんだ感情。
言い寄られたとしても、いつものようにスパッと切り捨てて。
隠した想いが腐敗し、解けて無くなるまで。

私に、時間をください。


追いつき、追い越した二人に笑みを見せた。
はっと息を呑む二人に、こう言葉を投げかける。



「なんて顔してるんですか」