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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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【完全読み切り】萅

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暖かい日差しの中、彼は時折眠たげな眼をして、丘で私のことをずっと見ていた。その目が私の心を見ているのか肢体を見ているのかはよく分からないが、どっちでもいいやと思っていた。彼の隣で、相棒のゴウカザルくんがこれまた彼同様に眠たげな眼をしている。どうやら私のユキメノコと彼のゴウカザルは、お互いに意識し合っているらしく、だったらくっついてしまえばいいのに、って思う。そうすれば、きっと私たちももっと気楽に話せるのに。
 彼がギンガ団アジトから私を救いだして、そして私たちが付き合いだして、最初の春が来た。

 春っていう字は本当はもっとややっこしい字だ。上から順に、
 「艸」草が茂る。
 「屯」生気が中にこもって芽が生い出る。
 「日」太陽がぽかぽか照らす。
 
 それがいつの日か、みんなが崩した字を使いたがって、「春」という字になってしまった。
 二人ではバランスが悪いのか?「三人でいる日」なのか?

 でも、彼はきっと、いくらコウキくんとは仲直りしたって言っていても、私とは二人だけでいたいだろう、そう思えた。そういえばコウキくんも、「もう僕とは話さないほうがいい」だなんて言っていたからな…。

 「お前、本当は誰が好きなんだよ」
 何でこのタイミングなのさ…。まあ、心が読めないのはしょうがない。むしろ読んでほしくない時もあるし、大体読めたら霊能力者だ。…しかし、どう答えたらいいのだろう。

 答えは、ジュンくんだって決まっているのに。

 私の手持ちのボールの中で、ミミロップが「言え」って言ってくる。でもできたらこんなに困りはしないよ。時間がどんどん過ぎる。季節外れの雪が降る。

 「…」
 「…」
 お互い無言。 
 デートって、もっと明るいものじゃなかったっけ?

 どうしよう…。

 気がつくと、私はなぜか涙を流していた。

 「……」
 やばい。彼に見られてしまった。
 空気がどんどん、夏のように厚ぼったくのしかかって汗はかき、しかしその汗がオホーツク気候に冷やされていく。

 「…ひぐっ…うっ…ううっ…」
 「…おい」

 完全に私サイテーだ。なんて女だろう。死んでしまいたい。もしくは、穴があるなら、それをマグマか温泉が吹き出るまで掘って、こもっていたい。その前にガスで死ぬかもしれないけど。

 「言葉で言えないのか?」