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最初と最後

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「アキラは最初と最後、どっちが良い?」

「は?」

ほたるの唐突な発言に、アキラは間抜けな声をあげてしまった。
ほたるの質問があまりにも抽象的過ぎたせいでもあるのだが。
「だから、最初と最後。どっち?」
「それは早い者勝ちとかそういったことですか?あるいは残り物には福があるとか……」
「何それ?」
「今質問してるのは私です!!」
「俺も今質問してる」

……ほたる、天然過ぎです。
此れでは埒があきません。
アキラは諦めて順序だてて話させようと細かくほたるに質問する事にした。
「先ずほたる。貴方は私に最初と最後どちらが良いか問いかけましたよね?」
「うん」
「何についての最初と最後なんですか?」
ほたるはう~んとね、と言うととんでもない発言をした。

「最初の男とか。そういったことの最初と最後」

ゴン!

「……良い音したね、今」
「ええ、そうでしょうとも!貴方の頭を思いっきり拳でもって殴ってやりましたからね!!」
衝撃に頭をグワングワンと揺らしているほたるの発言に顔を紅くしたアキラは冷たく言った。
ほたるは衝撃が収まるとアキラの肩をつかみ自分の方へと引き寄せた。
「真剣な話。アキラはどっちが良いの?」
確かにほたるの顔付きも声音も普段になく真剣なものだった。
ほたるの真剣な眼差しに見つめられて平気でいられる筈のないアキラは自身の心拍数が上昇するのを無視するよう勤めてほたるの問いについて考えた。
「……何故、そんなことを聞くんです?どうせ貴方の最初の相手は私ではないでしょう……?」
アキラは俯き平静を装いながら言ったが、その語尾は震えていた。
「うん。此れでもアキラより結構長生きしてるし……そう聞くってことは、アキラは最初の相手が重要ってこと?」
ほたるの発言をショックを受けている自分を認めたくない。
事実そう思っていた。
何故ならアキラの最初はほたるだから……。
押し黙って何も言わないアキラにほたるは小さく息をつくと言い聞かせるような柔らかな口調で話し出した。
「オレはね、最後が良い。最初なんて忘れてるし……昔過ぎて。でもさ、最後なら……」
ほたるは俯いたままのアキラの顔を持ち上げる。
アキラはあごを振ってほたるの手を拒もうとする。
が、ほたるはアキラの顔を両手でしっかりと包み正面からむき合うようにしてそれを許さなかった。
いつになく強気な行動をとるほたるにアキラは戸惑う。

「……ほたる?」

小さな呼びかけ。
微かな空気の振るえ。
だがほたるにはそれだけで嬉しい。
愛しい人の口から自分の名前が。
愛しい人の声が自分の名前を。

込み上げる愛おしさが伝わればいいのに、とほたるは衝動のままにアキラをきつく抱きしめた。
「最後なら、覚えてられる。最後なら、覚えててもらえる。最後なら……死ぬ瞬間にも幸せが訪れる。そんな気がする」
ほたるのこれ以上ないほどの告白にアキラは言葉が出なかった。
普段無表情で考えてる事が全く分からないほたるの中に秘められた炎のような……いや、業火にも勝る熱い激情。
それが全て自分に向けられている……。
「……何言ってるんですか。そんなの、最初も最後も関係ないですよ」
アキラはほたるに抱きしめられたままその腕の中で言った。
「……でも、最後の時の特別じゃなきゃ。特別じゃなくなってる事もあるでしょ?だからやっぱり最後が良い」
ほたるの発言に少しむっとしたアキラはほたるの顔を睨みつけて
「私の想いをそこら辺の風船と同じ扱いをしないで下さい!」
と怒鳴った。
「?風船??」
「つまり、軽く扱わないで下さいと言うことです。……見縊ってると、今に痛い目にあいますよ?」
アキラはそう言ってくすりと笑った。
「アキラらしいね」
ほたるもつられて笑った。
「それじゃ、オレがアキラの最後の人……?」
「ほたるの最後はもちろん私ですよね?」
どちらからともなく目を閉じて唇に触れる。
愛しい人の温もりがその小さな面積から体を形成している細胞の隅々にまで伝わる。

「……今からヤっても良い?」
既にほたるもアキラも息が上がっている。
アキラは頷く事で同意した。
ほたるはアキラをそっと横たえると熱を持ち始めたアキラの奥に自身を深く衝き立てた。


+ + + +


「……いいこと教えてあげようか」
情事の後の気だるさの色気を残した声でほたるは自分の腕の中でおとなしく眠っているアキラの耳元でそっと囁いた。
「実はね、アキラが最初。俺の初恋の相手。最初で最後の恋人……」
穏やかな寝息を漏らすアキラを見つめる目はひどく優しげで……。
「おやすみ」
汗で額にへばりついてしまった髪を手でそっとかきあげて口付けるとずれ落ちてしまった布団を肩まで持ち上げて掛けるとそのままアキラを腕の中に収めたまま眠りについてしまった。
さて。
実は狸寝入りなアキラ君はしっかりほたるの言葉を聞いていた訳で。
(……私にとっても貴方が最初で最後の……恋人ですよ)
恥ずかしすぎてとても聞かせられはしないけど。
心の中でなら。
アキラはほたるの腕に赤くなった顔を埋めて誘われるままに穏やかな眠りの波に身を任せた……。
作品名:最初と最後 作家名:ショウ