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Shina(科水でした)
Shina(科水でした)
novelistID. 3543
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うつつにみる夢

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多分、夢を見た
多分と確証がないのは、あんまりにも現実味がなくて、聞こえたそれがあんまり儚かったからだ


うつつにみる夢


――――き
―――す…
――――だい…き

真夜中を過ぎて空がぼんやりと白むかどうかと言う頃、あまやかで優しいテノールが耳を擽る

―――す…

…ど…だい…―――

―――だいすき


その日は、いつもの面子でさんざんに呑んで、部屋に戻ったのは午前4時を回っていた
風呂も何も明日で良いかと、布団に身を落とし、そのままとろとろと眠り落ちていく
その時だった


…き

だ…す…

…い…き


小さな小さな、だがひどくあまい声が聞こえた
不思議なことに、泥棒だとか強盗だとかそう言う考えはひとつも浮かばなかった
浮かばなかったのは、その囁きからは敵意だとか悪意そういったものがまったく感じられなかったからだ
それから、どこかで聞いたことのあるような、誰か知っているような声だったからだ


か…た
…ど……き


かどたすき
すきだ


ふわふわ
ふわふわ

優しいテノールが、眠りへ誘う
このまま眠りに落ちたら、きっと最高に心地良いに違いない

すき
すきだよ
かどた、すき

あまいあまい告白が繰り返し繰り返し耳をくすぐる

その時だった

カチ…ン

時計の針がひときわ大きく響いた
途端、ピタリと声が止んだ

無音

「え…?」

落ちてくる目蓋を無理に上げる
そこには飼っている兎が1羽
鼻をひくひくと忙しなく動かしているだけだ

「しずお…?」

門田が手を伸ばすと、兎はすりと頬を寄せてくる
あたたかい

抱き上げて胸の上に下ろすと、落ち着きなくあちこち視線を彷徨わせる
ゆっくりその背を撫でると、ゆるゆると躰を丸め、じっと門田を見つめてきた

とっとっとっとっと…

小動物特有の早鐘が門田の胸を打つ
心地良いリズムに誘われ、また睡魔が門田を包みはじめた


「静雄…どこ行っちまったんだ」


睡魔に誘われながら呟いた名は、1羽の名前ではなくて、ただ一人いまでも恋しいと思う行方の分からない想い人の名だった


to be...