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【DQ6】青い髪のはなし

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 光に透ける髪は空の色をしていた。
 初めて王子を見たのは兵士として登用されたときだった。目を引くきらびやかなドレスを纏う王妃の隣で、ちいさな王子は、ちいさな椅子にちょこんと座っていた。同じくきらびやかな服に身を包んでいたが、それよりも先に珍しい髪の色に目が行った。染めでもしたようなはっきりとしたコバルトブルー。その頃の王は白髪が混じり始めた銀髪で、王妃は柔らかな栗色の髪をしていたから余計に気になったのかもしれない。
 同期曰く、ああした珍しい色の髪をした人間はごくまれに生まれるのだそうだ。俺のひいひい……ひいじいさんがそうだったらしいと、自分はこげ茶色をした髪を指差す。単純に子どもに受け継がれるものではないらしい。俺の一族の男どもはみんなハゲの方をしっかり受け継いだんだとついでに言って聴衆の笑いを誘った。
 ―――まあほら、だからさ。俺はお仕えする王子様が滅多にない髪だって知ってなんか嬉しくなっちまうんだよなあ。勿論どんな髪の色をしてても頑張ってお仕えしようと思うよ。王様も王妃様もみんな良い方だもんな。でもなあ、それとは別にさ……なんだろうな、ちょっとばかり誇らしいっていうのかな。
 それは少し分かる気がした。例え各国の王族が集まってこれ以上ないくらいに贅を尽くした服や宝石を身に付けて己を主張したとしても、私達はけして自国の王子を見失うことはないのだ。あれは金で購える色ではない。
 そんな尊い立場にしては、仕草なんかがそこらの子どもとあまり変わらなかったような気もする。そううっかり零した言葉に周りの皆は目を丸くして、それから思い切り笑った。不敬罪だぞー、とからかう声も含めて殆どが好意を含んで同意するものだった。
 ―――しかし自分は落ち着きません、王子様を肩車するなど今でも身体が竦みます。
 そう言ったのはフランコだ。自分より年一つ先に召し抱えられた兵士で、武術もさることながら学の方もなかなからしい。厳つい外見に似合わず物語なども読むので、武術よりはそちらを好む気質の王子にとても懐かれているのだとこっそり耳打ちされた。想像してみて、思わず笑顔になってしまうような光景だ。
 いいじゃないか、と兵士にしては優しげな顔立ちの男が穏やかに笑う。
 ―――レイドックはそれでいいんだよ。







 器には塩漬け肉を十分に塩抜きしないまま煮たものが入っている。野菜らしき野菜はなく、僅かに何かの根が入れられているきりだった。出汁などないスープはひたすらに、辛い。
 それでも兵士達は貪るように食べる。息をする間もないように。身体が持たないといったことは考えていない。ただ暫し降り積もるばかりの疲労を忘れたい、それだけだった。
 代わる娯楽などあるはずもなかった。ここは僻地だった。
 スープを啜る。かじった根は固い上に苦かった。
 顔をしかめたのに気がついたのか向かいの男が疲れたように笑った。どうですか、あの大臣に逆らった末路は。そう問いかけるような顔だった。答えられず、私は固い肉を黙々と咀嚼していた。柔らかくなる気配は、ない。
作品名:【DQ6】青い髪のはなし 作家名:ケマリ