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タバコの銘柄は決めてない

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雲雀の部屋に煙草があった。
見覚えのある銘柄だ。
「雲雀、煙草吸うの」
聞くと、ネクタイを解いていた雲雀は一度山本を振り返り、「吸うよ、何」と言った。
雲雀と煙草の取り合わせは、山本には随分奇妙に見えた。
彼は学生の頃、風紀委員なんて仕事をしていて、そうしたものは特に厳しく取り締まっていたからだ。
「勝手をされるのが気に入らないだけ」
と雲雀は言った。学校は雲雀にとって雲雀そのものだった。学校で決まりごとを破るということは、雲雀を蹂躙するのと同じだ。雲雀はそれを決して許さない。
学生時代常につるんでいたメンツの一人が、煙草を半身のように扱う男だったからか、山本にとって雲雀が風紀を取り締まるというと、友人から半身を取り上げようとして派手な言い合い(怒鳴っているのは主に友人だが)をしている姿が多い。最後には必ず友人が負け、雲雀は勝ち誇りもせず、当然のような冷たい表情で黒衣を翻す。
そのとき、彼の掌で握りつぶされていた煙草と同じものが、ベッドサイドにある。
山本は箱を取り上げて中から一本抜き取った。
「雲雀は煙草、嫌いなのかと思ってた」
箱の傍には、ご丁寧にライターと、短くなってにじられた吸殻が何本か転がっている陶器の灰皿。
火をつけて一口吸い込むと、なじみのあるにおいがした。友人が常に漂わせている匂い。
目を閉じて感傷に浸った一瞬、口元から煙草を奪われた。
「勝手をしないで」
切れ長の目を不機嫌に吊り上げて、雲雀が灰皿に煙草をにじる。他の吸殻とは全く違う、長い吸殻の出来上がりだ。勿体無い。
雲雀はその灰皿を持って寝室を出て行ってしまった。
その姿は、山本の記憶にある彼の背中と全く同じだった。
作品名:タバコの銘柄は決めてない 作家名:JING