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かくして彼は語る(米英)

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*一部人間名が出てきます


俺の恋人には少し変な癖がある。

本人には面と向かって言えないんだけど(わーわー泣かれちゃうからね!)
彼自身は気づいていないその癖に俺が気づいたのは、彼と恋人になってから迎えた
初めての夜の時だった。

すごい緊張をしながらもようやく彼と結ばれて、幸せに浸りながら
俺は彼といわゆるピロートークをしていた。
指を絡ませて恥ずかしそうに笑う彼はもう一戦申し込みたくなるほど
可愛くてセクシーだったよ。
俺は良く彼の眉毛の太さをからかっていたけど、それはそうでもしなければ
皆が彼の可愛さに気づいてしまいそうだったからだ。
彼に庇護されていた頃から俺は彼のことを可愛い人だと思っていて
その可愛さに気づかない奴はなんて可哀想な奴なんだと思っていたよ。
今思えば、その頃の彼は大英帝国として名を馳せていて
おまけにヤンキーだったからね。
彼のことを可愛いと思える奴なんて俺ぐらいしかいなかったんだろう。
・・・・・・まあ彼の可愛さを語るのはそこまでにしようか。
キミが彼のことを好きになってしまっても困るしね。

そうそう。話の続きだね。
俺と彼は長いこと話しこんでいたんだけど疲労には勝てなくてね。
そろそろ眠ろうってときに彼はベッドから身体を起こそうとしたんだ。
でも腰が痛くてすぐにぺしゃと潰れてね。
慌てて抱き起した俺を恨みがましそうな目で見上げながらこう言ったんだ。

「クマをとってこい」

why?と思わず聞き返した俺を責めないでほしい。
彼の言うクマと言うのは俺が恋人同士になってから初めて彼にプレゼントしたもので
テディベアの本場ドイツで職人が手縫いで作ったものなんだ。
そのクマをプレゼントしたとき、彼はとても幸せそうに微笑んでいて
思わずテディベアがこんなに似合うおっさんはキミだけだねとからかってしまったよ。
けど、その時の彼はからかいにも反応せず「ありがとうアメリカ」と
微笑むばかりだった。
その後も彼はクマを大層大事にしてくれて、たまに手縫いの服を着せたりしていた。
だからそのクマは彼にとって大事なものであることは分かっていたんだけど
どうして彼がこの場で必要としたのかわからなかったんだ。

「あいつがいないと眠れないんだよ」

不思議に思って理由を問うとそう彼は言い返して早く取って来いと俺を急かした。
俺はしぶしぶながらもリビングに置いてあるクマを取りに行った。
恋人の他愛のない我儘くらいは聞いてあげないといけないと思ったしね。
ぬいぐるみを片手に寝室に戻ると彼はうとうとしながらも起きていた。
クマを渡すと彼はふにゃりと笑い

「アル、おやすみ」

ちゅ、と彼にしてはとても拙いキスをクマのぬいぐるみにして
あっけにとられている俺を尻目にクマを抱え込んで彼は眠ってしまったんだ。
どうせ抱えるなら俺を抱きしめてくれよ!って主張したかったけど
クマを抱きしめる彼があまりにも幸せそうだったからできなかった。
まったくもって俺は彼に甘いよね。
ああ、キミはとっくに知っていると思うけど、アルというのは俺が国民に混ざって
活動するときに使う名前の愛称だ。
なんと彼は俺の愛称をクマに名付けて、夜眠る前に挨拶をしてキスをしないと
眠れないらしいんだ。
うん、これは間違いないよ。
翌朝、まだ目覚めきっていない彼から聞き出したしね。
それに彼とは何度もベッドを共にしたけどそれを欠かした日は気絶した日しか
なかったからね。

どうだい?すごく変な癖だろ?
1000歳を越える老大国がぬいぐるみ抱え込んで寝るなんてさ!
笑っちゃいそうだろ。
実際俺も聞いたときは少し笑っちゃったしね。
けど、俺がいないときの夜の寂しさをそうして紛らわせているって聞いたら
笑うことはできなかったな。
それで何年もクマと過ごしているうちにクマがいないと
どうにも落ち着かなくなっちゃったんだって。
それってすっごいキュートだと思わないかい?
といってもキミには譲らないよ!
彼の可愛い顔も身体も心も全部俺のものだからね。

え?それよりも初めての夜のことを詳しく?

・・・いや、いくらキミでも話せないよ。
ま、本当は話したいくらいだけど、バレてしまったら盛大に拗ねてしまう人が
いるからね。
俺と彼の輝かしい未来の為にもこれは秘密にさせてもらうよ。