王子様を手に入れる方法02
そう言ってあっさりとひかれる手を椿はあわててつかむ。その手はいつも通りひんやりとしていた。けれど、この大きく美しい手が熱くなる瞬間を椿は知っている。
「嫌じゃないです。嬉しいっす、その、すごく」
本当に嬉しげに笑う椿になんだかジーノも気分がよくなって、つないだ手を離すことなく二人はマセラッティが停まってある駐車場まで歩いた。
ジーノの宣言通り優しく抱かれた椿は翌日の練習に支障をきたすことなく、むしろ周囲が驚くほどの活躍をみせた。
その分、ジーノはいつも以上に動かず練習に参加していた。
――搾り取られるかとおもった、とは後日のジーノの談である。
作品名:王子様を手に入れる方法02 作家名:田中 塩