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空の中、海の上、友の声

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 見上げる空も眼下の海も、馬鹿みたいにどこまでも青い。空だけは所々硝煙で黒いのだけど。
 ふわふわと銀髪を風に遊ばせながら、銀時は口を開いた。
「ヅラぁ」
「ヅラじゃない桂だ」
 同じく、短い黒髪を靡かせて桂は即座に応える。桂から自分の両足にしがみついている銀時の顔は見えない。たとえ見えたとしても、桂はそれを見ていない。ただただ空だけを見ていた。
「俺、覚悟ができた」
「…そうか」
「迷うかもしねれェけど、剣は抜くから」
「…俺もだ」
 ――仲間、と呼ぶには、若干殺気立ち過ぎているのかもしれない自分達は。盟友と言うには、共に闘った時間は短く、昔過ぎる。
 敵と呼ぶには、あまりにも近過ぎた。
「俺はあいつが嫌いだ、今も昔も」
「そーかい」
 そして、友と呼ぶには遠過ぎる。第一、互いに良い感情は持っていないのだ。
「よかったなァ、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。何がだ」
「今思うと、俺、お前を斬ってた」
「…そうだろうな」
「ああ、お前は変わってないかもしれないか」
「何も言うな」
 桂は利口だ。頭が良かった、そしてそれは今もきっと。
 銀時は、大衆から見れば実に賢い生き方をしている。桂は馬鹿な生き方をしている。失われたものを取り戻そうなどと。そして桂はテロリストと呼ばれるようになった。
「頼むよ、俺に剣を抜かせんな」
「お前が剣を抜くのは、お前自身の為だけだろう。俺の頼みや命令で、お前は剣を抜くのか」
「まぁ、な」
 桂はわざと見当違いの返事をして、銀時もそれに応じた。
 桂から銀時の顔は見えない。ましてや心など、顔を見たって窺い知れるはずも無い。銀時は、本当に本質的なところでは、滅多に感情的にならないのだ。
 空が遠くなる、海が近くなる。頭上の船は最早別の方向に動き出していて、目下の船上では、大勢がこちらを指差し、声を上げ、ちぎれんばかりに手を振っている。
「お前を斬るのは骨が折れそうだ」
 桂はもう一度、確かめるように言った。

「俺は誰も斬りたくないよ」











作品名:空の中、海の上、友の声 作家名:あかり