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novelistID. 2796
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行為の後

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「俺がもし煙草を吸うキャラだったら、煙草吸ってたな」
「……なんで?」
「口さみしい時、吸えるから。あと、なんかかっこよくねえ?」
はは、と笑いながら、日向は乱れた衣服を整えた。
音無は友人を恨めしげに見上げた。こちらは疲労困憊ですぐには動けそうもない。ジャケットもシャツも胸を大きく開いており、日に当たっていない生白い肌には、白濁の体液が飛び散ったままだ。息が上がっていて、運動不足を痛感した。死んだ後に体力のことを気にしなければならないなんて、ものすごくシュールで、笑いがこみ上げてきた。
日向はからからと音を立ててトイレットペーパーを巻き取り、音無の腹をぬぐった。乱暴でないその仕草に、胸の奥が熱くなる。萎えた性器もきれいに拭かれ、まだ熱を持っている後ろも始末してくれた。音無にとっては恥ずかしいことこの上ない事後の処理も日向は楽しそうに行う。
起き抜けでまだ寝ぼけている小さな子どもにするように、日向は音無に下着とスラックスをはかせてやり、シャツのボタンを一つ一つはめていった。タイを手にして困ったように口の端を上げる。
「ふだんネクタイつけてねえから、これは結んでやれないな」
「……それくらい自分でする」
音無はタイを奪い取った。
日向はその腕をつかみ、音無を引っ張り起こした。まだ足に力が入らず、少しぐらつく。日向はすぐに腕に自分の肩を差し入れて、身体を支えた。
「あれこれ他人にされるのって、不満?」
「……わからない」
「俺は楽しいけど。するのも、されるのも。おまえがあんまり嫌だっていうんなら、そっちに合わせる」
「なんで急にそんなこと言うんだ?」
「そりゃおまえ、好きだし、付き合ってるからだろ」
当然のことを聞くなと言って、日向は音無の額にキスをした。
作品名:行為の後 作家名:紙のサイズはA4