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不可解

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見られている。
ものすごく見られている。

正面から注がれ続ける視線に、身体の表面がじわじわ苛まれているような心地が堪らず、帝人は小柄な体躯を一層縮めた。

往来の片隅、少年と男は雑踏から少し離れて対峙していた。
帝人が前に会ったとき、男はケガのためその顔面を包帯やらガーゼやらで覆っていた。治癒は順調に進んでいるらしく、その包帯とガーゼは若干少なくなっている。
そしてその分よく見えるようになった目で、六条千景は俯き加減で目をそらす帝人を凝視していた。
ガン見である。

(怖いというかんじではないのだけれど・・・)
そんなに見られると居たたまれない。

そもそもこの人何しに来たんだろう。
抗争の件でまだなにか用があるとかだろうか。何故僕に。やっぱり落とし前付けろとかそういうの?どうしようボールペンあったかな。学校帰りなら持ってるのに。休みの日だし私服だから無かったかも。そのへんに落ちてるビンとかでも
「俺は女の子が好きだ。」
「へぇ?」
唐突に六条が口をきいた。驚いて咄嗟に伏せていた視線を上げる。
相変わらず注視されているが、やはり険のあるものではない。
むしろ困惑が混じった顔をしている気がするのは気のせいだろうか。
「俺は、女の子が好きだ。」
「はぁ・・・?」
帝人が素っ頓狂な声を上げたきり返事をしないので、六条は同じセリフを繰り返した。

確かに以前会ったときこの男は複数の女性を連れていた。事実なのだろうと思う。
しかし何故それをこの場で自分に言うのか。帝人もまた困惑を顔に浮かべる。

「で、俺は女の子のみに反応する琴線というか、センサーのようなものを持っている。」
「それは・・・すごいですね。」
「バカ、男なら持っていて然るべきもんだ。」
なんだか話が良く分からない方向に進んでいるなぁ。

でだな、と一区切りして、六条はひとつ息を吐くと、改めて真剣な表情で帝人に向き直る。
「お前が俺の女の子センサーに引っかかってしょうがないんだが、お前もしかして女か。」


そうだ、静雄さんを呼ぼう。それでライター貸して貰おう。


******
「埼玉帰ってから気になって気になって気になってしょうがなくってさー。あんまり気になるからこうして確認に来たんだよ。」
「埼玉に帰れ。」
「もしも女の子ならほっとけないだろ。ダラーズなんて危ないからやめて俺のハニーになるんだ。」
「ダラーズ云々はまぁいいにしても後半の説得要りませんよねそれ要りませんよね。大体僕男ですからハニーは無いです。」
「ちっさいし細っこいしその体格で高校生なら女でも不思議は」
「切り落としますよ。」

最後には税関チェックのごとく全身触られて、それでも納得いかない風でしたが時間が迫ってきたらしく六条さんは帰っていきました。

(・・・・何だかんだ言いつつ、いじめに来たんだろうか)
そんな疑惑を抱くほどには不可解かつ不愉快な訪問であった。

ちなみに一週間後また池袋で捕まりました。
疑惑は深まるばかりです。

END



作品名:不可解 作家名:白熊五郎