ペーパー再録_2
ここ東方司令部は、一年を通して常に厄介事のパレードが起きると他の司令部連中に言われているらしい。確かにこちらに配属する前からそんな話は聞いていたが、実際中に入ってみると、そんな風に第三者的に振り返ってみるヒマはないので実のところどうなのかよく判らないが。
確かに司令部に詰めっぱなしで強制的にお泊り(しかも連泊)させられていて、もうそろそろいい加減にしてほしいなー、とは思っていたが。
たぶん、この人よりかはマシな状況なんだろう、これでも。
「・・・・・・だいじょうぶですかー」
何とか今宵もひと段落したのでざっと汗を流した後、ちょっと寝てこようと思って仮眠室の扉を開けた先には。たぶんベッドまで辿り着けなかったんだろう、黒髪の上司が転がっていた。
「何でこんなとこで行き倒れてんですかあんたは…!」
せめてベッドの上まで頑張ってくださいよ…!
入ってきたのが自分だったから良かったものの、下士官連中とかだったらどうすんですか、とかブツブツ言ってみたが全然聞こえていない。完全にぐったり力の抜けた身体を手近なベッドに何とか引き上げて転がしたところで、ようやく彼はうっすらと目を開けた。が、まだウツウツとしているのか、全然焦点が合ってない。
「・・・・・・さいあくだ・・・」
「何がですか」
「何故私がベッドに男に引きずり込まれるハメに・・・」
「それはあんたがここでぶっ倒れてたからですよ。人聞きの悪い言い方せんで下さい。変なウワサたったらどーしてくれるんですか」
頭は寝ていても口は半分起きているらしい。眉間にしわ寄せて唸りながら寝返りを打つと、枕を抱え込んで背を向けてしまった。
・・・確か年上だったはずなんだが、何で時々こんななんだろう。
「何日寝てないんですか」
「・・・・・・3日?」
疑問形な辺り記憶も定かでないらしい。見かけよりある体力に任せてあちこち奔走していたが、とうとうガス欠か。
「ひと寝入りしたら、次は補給に行きましょう。中尉が良い店探しておいてくれるって」
「…何かあったか?」
「だってどたばたしててまだやってないじゃないですか。あんたの昇進祝い兼、オレに可愛い彼女が出来ました報告会」
「…私の大佐位拝命とお前の彼女が同列なのが納得いかん」
「オレ的にはめでたい事には違いないんで。良いじゃないですか」
そう言ってやれば、上官はふん、と鼻で笑ってくださった。
「次は2ヶ月に賭けてやる」
「やめてくださいよ、あんたの予言て不吉なんですから」
「なら、長続きするようにちょっとは磨くんだな」
「磨くって何を」
しかしそれ以上突っ込む余地も無く、再び目を閉じた上官殿は、眠りの女神様のお迎えにほいほいついて行ったようだった。
ふー、と重いため息を一つついて小さく呟く声も、きっと届きはしないだろうが。
「・・・誰のせいだと思ってんだか」
ホント、責任とって貰いたい、って時々思うんだけど。
おそまつ。