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タイムマシーンデート

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「雲雀さんはかわいーなー」
「ちょっと!何なの貴方!?」



雲雀恭弥は珍しく混乱していた。

沢田綱吉の部屋で沢田綱吉を押し倒し、さあおいしく頂こうかというそんな時。突然綱吉が煙幕に包まれたかと思えば、煙の中から伸びてきた手に肩を掴まれ逆に押し倒された。
不意打ちとはいえなんたる不覚。
反論も反撃もする間もなく煙がはれた先にいたのは、綱吉によく似た青年。
さらなる不意打ちに瞠目する雲雀をよそに、青年は「やった成功した!」と言って雲雀を思いきり抱きしめた。

そして今に至るわけである。



10分経過。雲雀は未だ青年の腕の中だ。
青年はその細身な体に似合わず意外と力があった。両手が塞がれてることもあり、始めは抵抗していた雲雀だが今は半分諦めた。
相手の力が一瞬でも緩んだ隙に一撃をくれてやろうと密かに虎視眈々と狙っているが。

それを知ってか知らずか。青年の力は一向に緩む気配はない。

とりあえず雲雀は青年を観察することにした。
見える範囲と密接部分を確認する限り何か武器を携帯している様子はない。
服は上質な一点物。
ベストや彼が纏う空気からは異国の匂いがした。

(匂い…)

少し首を傾けて彼の匂いを嗅ぐ。

「雲雀さん?」
(彼の匂いがする)

沢田綱吉の匂いがする。
それと、およそ彼にも、青年にも似つかわしくない匂い。

「血の匂いがする」

一日二日では決して染みつくことのない匂いだ。

「貴方、誰」

沢田綱吉?
雲雀の問いに青年は答えない。
そのかわり静かに雲雀から体を離した。
と、思ったらまた接近。

「っ!」
「雲雀さん、今度はデートしましょうね」

朗らかな笑顔を残して再び煙幕。
そして煙がはれた先にはぽかんと口を開けた沢田綱吉。
綱吉の目線は雲雀の顔へ注がれている。
対して雲雀は綱吉のことなどおかまいなしでひたすら一点を見つめていた。
現れてからいなくなるまで、不意打ちをされっぱなし。
だんだんと悔しさよりも腹が立ってきた。

「ひ、雲雀さん?」
「あの男、次会ったら咬み殺してやる…っ」


あの男って誰だ何があったと一人で騒ぐ綱吉をよそに、雲雀はベッドに思いきり拳を叩きつけた。








「いやー昔の雲雀さん可愛かったなあ」

かわいくて思わずキスしちゃいました、と上機嫌で綱吉は話す。

「ジャンニーニの発明品も上手くいったし、15分ってのは短いけど10年バズーカよりは断然長いもんな」
「……」
「デートの約束もしちゃったし、次行くまでにきちんと決めとかないとですよねっ」
「……ああそう」

明らかに不機嫌さを帯びた声に、しかし怯えることもなく綱吉は隣にすとんと座った。

「もしかしてやきもち妬いてます?」

相手は雲雀さんですよ、と横に座る昔よりも大分成長した彼に話しかける。が、変わらず雲雀は不機嫌なままだ。

「昔だろうと関係ないね。浮気は許さないよ」
「うわ…そういう雲雀さんは昔のオレと何してたんですか」
「別に。お茶飲みながら話をしただけ」
「ワオ…雲雀さんいつからそんな健全な人に」
「君と一緒にしないでくれる」
「それってオレがまるで不健全みた…わっ」
「だってそうでしょ」

この浮気者。

ソファに押し倒されてしゅるりとネクタイを外される。
そんなことをされているにもかかわらず綱吉はへらへらと笑っている。
雲雀は思わず眉根を寄せた。

「何笑ってるの。君変態?」
「いやあ、過去に行けて良かったなあと思って」


雲雀さんは今でも十分可愛かったんですね!

なんて。
案の定雲雀に殴られた。
作品名:タイムマシーンデート 作家名:七篠由良