自動発行通行証(光→謙也)
常にシャッフルモードだから、後は流れてくる音に意識を潜らせる。
no speed no life
ってあの人はいつも、言っているけれど。
決して自分は
no music no life
ってわけではない。
音楽が無くても、生きてはゆけると思う。
音楽はただの暇つぶし。
外界を遮断する為の、手段。
だからいつも、音量は音漏れスレスレにしてる。
一種の牽制。
ここから先は、立ち入り禁止。
俺のパーソナルスペースに、勝手に侵入するな。
けれど。
財前、と。
自分を呼ぶ、あの声だけは。
全てを逆転させる、通行証。
音楽は、無くても生きてゆける。
けれども。
音が無くなったら、生きていゆけない。
貴方に呼んでもらえないなんて、
俺は耐えられない。
「なんすか、謙也さん。」
音楽を消し去って、貴方の声を聞く。
自分を遮断した世界から、唯一掬うソレ。
世界に音が、溢れてゆく。
だから呼んで、俺の名を。
作品名:自動発行通行証(光→謙也) 作家名:把瀬紬